七つ目の計測門

濁流に追われながら、倉持トワは六つ目の計測門をくぐった。

《避難計測門》

通過するたび公式記録へ三十秒加算。

半径二十メートル以内の生存者を登録します。

《登録人数:六十三》

《公式タイム:4分12秒》

「七つ目は飛ばせ!」

先頭の攻略者が屋根から叫ぶ。最後の門は沈みかけた市場の中央にある。回れば世界記録は失う。直進すれば一分以上縮められる。

トワの横を、上位組が跳躍技能で飛び越えていく。彼らの登録人数は一。自分だけだ。

市場から鐘が鳴った。NPCの商人たちが屋根へ取り残されている。避難門は通った者を救う装置ではない。周囲の生存座標を記録し、ゴール後の転送対象に加える装置だ。

トワは逆方向へ曲がった。

濁流は腰まで来ている。七つ目の門へ着く頃には残り時間が十秒を切った。商人、子供、寝たきりの老人。声を張り、全員を二十メートル以内へ集める。

「門をくぐっても、俺たちは走れない」と老人が言う。

「走るのは俺だけでいい」

トワが門を越える。

《登録人数:百二十一》

《公式タイム:5分02秒》

残り五秒。ゴールは遠い。彼は水へ流されながら、転送ボタンだけを押した。

上位組が先にゴールし、三分台の記録を出す。直後、登録された避難者が順に安全地帯へ転送された。トワ自身は最後に濁流へ沈む。

目を開けると、百二十人のNPCに引き上げられていた。彼らが登録圏内にいたため、転送先でトワの座標も共有されたのだ。

ランキングが《一人あたり所要時間》へ再計算される。

《総合一位:倉持トワ》

《5分02秒÷救助百二十一名》

安全地帯へ着いた商人は、濡れた帳簿を開いてトワの名を書いた。老人は一秒も走っていない。それでも転送の瞬間、隣の子供を抱き上げていた。

「救助人数に、私たちが救った人も足してよいですか」

計測盤は答えず、登録人数だけが百二十二へ増えた。濁流からトワを引き上げた行為が、新しい救助として認識されたのだ。

門を多く通ったせいで遅くなったのではない。門を通るたび、ゴールへ到着する人間が増えた。それが記録の分母を変えていた。

《最短記録を更新――速さは、門をいくつ省いたかではなく、一秒で何人を未来へ運んだか》