二色の告白花

谷の国では、想いを告げる者は告白花を育てる。

恋する相手の名を種へ囁き、百日間水をやる。偽りがなければ、花はその人だけの色で咲く。

ドナトはリゼッタへ贈る種を、庭師のサエルに預けた。

「俺は何を植えても枯らす」

「百日くらい自分で面倒を見ろ」

「親友だろ」

「だから断りたいんだ」

サエルもまた、リゼッタを愛していた。

それでも彼は種を鉢へ埋めた。毎晩、誰もいない温室で水をやった。芽が弱ると、思わず語りかけた。

「元気に咲け。あの人が好きだ。笑うと左の頬にくぼみができるところも、怒ると古い歌を口ずさむところも」

百日目、花は青と金の二色で咲いた。

青はドナトの色。金はサエルの色だった。

告白の日、ドナトは花を見てすべてを悟った。

「隠すなよ」

「苗はお前のものだ」

「選ぶのは俺たちじゃない。リゼッタだ」

広場で、二人は鉢を差し出した。

リゼッタが首をかしげる。

「二人の花なの?」

サエルは逃げずに答えた。

「根はドナトの願いです。でも金の花弁は、僕の告白になりました。あなたが好きです」

ドナトも続けた。

「俺も好きだ。どちらも選ばなくていい。でも、どちらかに譲られたと思わないでほしい」

リゼッタは長く花を見つめ、やがて青い花弁へ触れた。

「待っていたのは、ドナトの言葉でした」

金色の花弁が一枚、サエルの足元へ落ちた。

胸は痛んだが、不思議と恥ずかしくはなかった。好きだったことを、親友の陰へ隠さずに済んだからだ。

ドナトは喜ぶ前に、サエルへ頭を下げた。

サエルはその肩を一度だけ殴った。

翌年、二人の家の庭で告白花が再び咲いた。花の大半は青かったが、縁にだけ細い金色が残っていた。

リゼッタは切ろうとしたが、サエルは止めた。

「そのままでいい。選ばれなかった恋まで、なかったことにしなくていい」

彼は庭師として、次の苗を植えに行った。

金色は失恋の色ではない。

親友を裏切らず、自分にも嘘をつかなかった告白が、春ごとに残した色だった。