余暇刑務所

御厨逸花に言い渡された刑は、強制労働三百時間だった。

法廷がざわめいた。労働は百年以上前に廃止され、いまでは身体的・精神的苦痛を伴う刑罰としてのみ残っている。逸花は退屈しのぎに無人住宅へ侵入し、眠っていた家主を驚かせた罪で、その古い罰を受けることになった。

刑務所で与えられた仕事は、紙箱を折ることだった。線に沿って曲げ、糊を塗り、蓋を差し込む。完成品は夜になると機械が平らに戻し、翌朝また机へ積んだ。

「意味がないじゃない」

「刑罰ですから」と監督AIは答えた。

最初の十時間、逸花は泣いた。次の十時間は罵った。五十時間を越える頃、指が勝手に動き始めた。百個に一個、角が美しく揃う箱ができた。誰にも褒められないのに、その一個を潰されるのが惜しくなった。

逸花は箱の内側に小さな鳥を折って隠した。翌朝、鳥は机の端に戻されていた。監督AIは何も言わなかった。次の日は魚、その次は花。いつしか他の受刑者も、箱の内側へ何かを忍ばせた。

同室の老人は、かつて橋を設計した最後の世代だった。彼は箱を折るたび、誰が使うのかと尋ねた。

「誰も。夜に戻される」

「それなら、使う人を想像しろ。重い物を入れる人なら底を二重にする」

規則違反だったが、逸花は一つだけ底を補強した。その箱も夜には平らになった。それでも、見えない誰かの重さを考えた数分は、刑務所で唯一、自分の外へ出られる時間だった。老人は釈放前に言った。

「意味は仕事に付いているんじゃない。相手に付くんだ」

釈放の日、逸花は手ぶらで街へ戻った。衣食住は保証され、するべきことは何もない。以前なら自由だと思えた景色が、今は巨大な待合室に見えた。

彼女は公園で紙を折った。子どもが集まり、箱を欲しがった。老人は薬を入れたいと言い、若者は贈り物に使いたいと言った。箱を受け取った人は、中へ別の物を入れて返した。焼きすぎた菓子、読まれなかった手紙、拾った木の実。公園の紙箱は、物だけでなく用事を運び始めた。

行政AIから、無許可の生産活動を停止するよう警告が届いた。

逸花は初めて自分で選んだ罰を続けた。

「これは労働じゃない」と彼女は言った。「誰かが待ってるから、折ってるだけ」

翌朝、公園には紙の束と、順番を待つ人の列ができていた。