全員避難済み
【私立清祥学園・校内連絡記録】
八時十二分 養護教諭から教頭へ
真砂周君が裏門から来ました。
父親に見つかるのを恐れています。腕に新しい打撲痕があります。児童相談所の担当者が十一時に来るまで、旧校舎二階の個別相談室で待機させます。
父親から問い合わせがあった場合は、登校していないと回答してください。
八時十六分 教頭から関係職員へ
了解。
出席簿上は欠席のままにしてください。
相談室は外から施錠し、本人が廊下へ出ないように。父親が校内へ来る可能性があります。
九時四十一分 校内自動通知
旧校舎一階・家庭科準備室で火災報知器が作動しました。
全員、校庭へ避難してください。
九時四十八分 六年一組担任から教頭へ
在籍二十九名中、出席二十八名。
出席者全員の避難を確認しました。
真砂君は欠席です。
九時五十分 教頭から消防本部へ
児童、教職員とも全員避難済みです。
旧校舎内に残留者はいません。
九時五十二分 真砂周・学校用端末から教頭へ
〈先生、廊下に煙が出ています〉
〈鍵が開きません〉
九時五十三分 既読
九時五十四分 真砂周
〈父が来たんですか〉
〈静かにしているから、ここを開けてください〉
九時五十五分 既読
九時五十七分 教頭から養護教諭へ
真砂君の件は消防へ伝えないでください。
すでに「全員避難済み」と報告しています。今から訂正すると、施錠の理由と欠席処理について説明が必要になります。
旧校舎の火は一階です。担当者が到着するまで、室内で待たせてください。
十時三分 養護教諭から教頭へ
相談室の予備鍵が見つかりません。
煙が二階まで上がっています。消防へ伝えます。
十時四分 教頭から養護教諭へ
勝手な行動は控えてください。
真砂君は本日、学校に来ていません。
十時二十七分 消防本部から学園へ
旧校舎二階の施錠された部屋で、児童一名を発見。
搬送時、意識なし。
在校者名簿および避難者名簿に該当者なし。身元確認をお願いします。
十一時二分 教頭から全職員へ
本日の火災について、報道機関や保護者への個別回答は禁止します。
発見された児童は、学校側の把握しない経路で校内へ侵入した可能性があります。
当初の報告どおり、避難開始時点で在校していた全員の安全は確認されています。
【記録末尾・自動保存】
九時五十二分から十時六分まで、真砂周の端末から教頭宛てに十三件のメッセージが送信されている。
すべて既読。
最後の一件のみ、本文はなかった。
添付された写真には、煙の向こうで、外側から掛けられた相談室の鍵が写っていた。