冷凍庫の白い箱

羽鳥千景は、入院の準備より先に餃子の皮を買った。

ルームメイトは「病院へ持っていけないよ」と笑ったが、千景は二袋を買い物かごに入れた。明日から誰が夕飯を作るのか、と考えた結果だった。

検査で見つかった病気は、治るかもしれないし、治療が効かないかもしれない。医師の説明はそこまで正確だった。千景は帰宅してから、その曖昧さを冷蔵庫の残り物に置き換えた。白菜半玉、ひき肉、にら一束。これなら四十個作れる。

二人で食卓に新聞紙を広げた。ルームメイトは包み方が下手で、ひだが右へ寄る。千景は直そうとしたが、途中でやめた。

「焼けば同じ」

「それ、料理上手が言うと腹立つ」

会話はそこで切れた。千景は皮の縁に水を塗り、肉だねを置き、指で閉じる。一個、二個と白い半月が並ぶ。入院日数の見通しより、残りの皮の枚数のほうが分かりやすかった。

最後の一枚だけ、肉だねが多く残った。無理に詰めると破れそうで、千景は少し戻した。ルームメイトが余った肉を丸め、小さなつくねにする。

今夜食べる十個をフライパンに並べ、残りは金属のバットに載せて冷凍した。焼ける音が部屋を満たし、水を入れると白い蒸気で窓が曇った。二人は酢だけで食べた。ルームメイトは形の悪いものから選び、千景は底の焦げたものを取った。

食後、凍りかけた餃子を保存袋に移した。袋には日付ではなく、「水百、蓋七分」と書く。ルームメイトが「帰ったら焼いて」と言いかけ、油性ペンの蓋を閉めた。

ルームメイトは保存袋を持ち上げ、形の違う餃子を指で数えた。自分が包んだものだけ、ひだが浅くてすぐ分かる。「先にこれから食べる」と言い、袋の上へ星印をつけた。千景は賞味期限を書く欄に、帰宅予定ではなく焼き方の続きを記した。油は少なめ、最後に蓋を外して水分を飛ばす。文字が袋の端まで届き、二人で少しだけ笑った。

千景は白い保存箱へ袋を立て、つくねを一番手前に置いた。冷気が指先に刺さる。箱を奥まで押し込み、冷凍庫の引き出しを閉めた。