冷凍庫の領収書

晃生の通帳から、毎月違う女へ金が流れていた。

私の知らないところで女にいい顔をしていた。その事実だけで、金額以上に胸が焼けた。

三万円、五万円、八万二千円。摘要欄には「返金」とだけある。問い詰めても、彼は通帳を閉じ、「結婚する前に片づけたいことがある」としか言わない。

不自然なのは、領収書を冷凍庫に隠していたことだ。ジッパー袋に入れ、アイスの箱の下へ重ねている。もう一つ、私が郵便を開けるたび、晃生は笑わずに言った。

「莉世は、他人宛ての封筒でも迷わないね」

婚約者なのだから、秘密を持たれる方が悪い。

私はネットで小さなセレクトショップをしている。友人にだけ先行販売を教え、入荷前の商品代を預かることもある。仕入れが遅れれば、別の商品を勧める。みんな私を応援したくて買っているのだから、返金を急ぐ必要はない。

むしろ待てない人には、商売を応援する資格がない。私はグループチャットで、そういう人の名前を直接は出さずに注意した。晃生は「相手が自分だと分かる書き方だね」と言ったが、誤解する方に後ろめたい事情があるのだ。売上が足りない月は、預かった代金から結婚式の予約金も払った。どうせ成功すれば戻せる。

なのに最近、客だった友人たちが次々と連絡を絶った。晃生に相談すると、「僕が話しておく」と優しく引き受けてくれた。やはり頼れる人だと思っていた。

通帳の女たちが、その友人だと気づくまでは。

「勝手に返したの?」

晃生は冷凍庫から袋を出した。中身は領収書ではなく、送金記録、私の販売ページの保存画像、納期を尋ねる友人への返信だった。私が削除したはずの文面まである。

「君が返さないから」

「私のお金よ」

「彼女たちのお金だ」

その言葉で、私は被害者から泥棒にされた。

晃生は婚約指輪を外し、袋と一緒に鞄へ入れた。私は泣きながら、結婚資金を奪った彼を責め続けた。

冷凍庫に残された最後の紙だけは、送金票ではなかった。

被害届の受理番号には、私が「仲の悪い女」と呼んでいた全員の名前が並んでいた。