十五発目

梶尾宗一鑑識係長は、床に並べた十四個の薬莢を見ていた。

公式記録では、神代駿介巡査が十四発、射殺された強盗犯が一発。犯人が先に撃ったから、神代は応射した。十五個目の薬莢は犯人の足元から回収され、別の袋に入っている。

「現場再検証は十分だろう」

国見俊房刑事部長が、体育館のような射撃訓練室で言った。明朝には適正射撃と発表される。

宗一は十五個目の袋を開けずに傾けた。中の薬莢は黒ずみ、口径もわずかに細い。犯人の古い自動拳銃に合う三八〇ACPだ。書類上は完璧だった。

「私が現場で拾ったとき、これではありませんでした」

「記憶で証拠を否定するのか」

「十五個とも同じ金色でした」

国見は鼻で笑った。

「銃撃の直後だ。混乱していたんだろう」

宗一は自分の胸元のカメラ映像を止めた。午前二時七分、床へ番号札を置く自分の手。その横に十五個の薬莢が映っている。拡大すると、すべて底面に同じ製造記号が刻まれていた。県警が一括購入した九ミリ弾のロット番号。犯人の銃からは発射できない。

映像の次の場面では、神代が震える手で弾倉を抜いていた。装填数は十五、残弾はゼロ。最初の一発も、最後の一発も、すべて神代が撃ったことになる。

「映像はノイズが多い。判別不能で処理しろ」

「元データなら読めます」

「梶尾。死んだ男は銃を持っていた。神代は将来のある警察官だ。十五発目の出所を変えて、誰が傷つく」

宗一は薬莢袋の封緘を見た。自分が採取時に貼った銀色の封印は切られ、その上に透明テープが重ねられている。保管履歴では、国見の秘書官が深夜に一度だけ出庫していた。

正すなら、神代だけでは終わらない。国見、保管係、映像を短縮版へ差し替えた広報班まで連なる。宗一の二十七年の鑑識歴も、『記憶違いを騒いだ男』の一行で片づけられるだろう。

それでも十五発目を他人の銃へ移せば、次の射撃にも同じ免罪符を渡す。

宗一は原映像のハッシュ値を記録し、薬莢袋の封印破損を撮影した。机の上に十五個分の番号札を一直線に並べる。

国見の前で、外部監察用のアップロードを開始した。