同じ時刻表の別の駅

駅前の進学塾には、東京の大学へ行く私と、地元の専門学校へ進む恋人が通っていた。

帰りの電車は毎日同じだった。

ホームのベンチで単語帳を開き、二人とも勉強するふりをした。話題は模試や願書ばかりで、卒業後のことは避けていた。

ある夜、恋人が時刻表を指した。

「四月から、こっちの線使わないんだよね」

東京へ向かう新幹線は、隣の大きな駅から出る。

「帰省するときは使うよ」

「何回?」

答えられなかった。

遠距離でも大丈夫、と言えば軽すぎる。別れよう、と言えば早すぎる。

電車が遅れ、ホームに冷たい風が吹いた。恋人はマフラーへ顔を埋めた。

「地元に残るの、逃げだと思う?」

「思わない」

「みんな、外へ出たほうが成長するって言う」

彼女は祖父の工房を継ぐため、デザインの専門学校を選んだ。東京の大学にも合格できる成績だった。

「僕は、東京へ行くのが逃げかもしれない」

家族と話すのが苦手で、町の狭さに息が詰まり、知らない場所へ行けば自分を変えられると思っている。

二人で笑った。

上京と地元残留は、勇気と臆病に分けられるほど単純ではなかった。

電車が来るまで、あと六分。

恋人は時刻表の写真を撮った。

「四月になったら、この時間に電話しよう」

「毎日?」

「毎日は無理。月に一回」

「少なくない?」

「守れない約束より多い」

現実的すぎる言い方が、彼女らしかった。

電車が到着し、ドアが開いた。

いつもなら隣の席へ座るのに、その日は向かい合った。

「別れないって約束は?」

私が聞くと、彼女は首を振った。

「しない。別れたくなったら、ちゃんと言う約束にする」

胸が痛んだが、うなずいた。

春、私は東京へ行った。

最初の電話の日、私は時刻を間違えた。彼女は工房の手伝いで遅れた。結局、予定より一時間後に話した。

それでも電話はつながった。

同じ時刻表を見なくなっても、同じ時間を作ることはできた。

一年後、駅前の時刻表は改正された。

私たちの約束も何度か変わった。

変わらないことではなく、変わるたびに話すことだけが、二人を別の駅からつないでいた。