土の下の小さな王国
ガルドの畑は、地上から見ると静かだった。
土の下では、拳ほどの土人形が百体、忙しく働いている。熟した芋の根を見分け、周囲の土を崩し、傷つけないよう両腕で抱え、地表の木箱まで運ぶ。箱がいっぱいになれば蓋をし、商人の転送陣へ押し込む。
ガルドは井戸端に座り、湯気の立つ黒茶を飲んでいた。
鉱山で働いていた頃、座って飲み物を飲むなど許されなかった。腰の革帯にはいつも予備の楔と槌。頭上から砂が落ちても、監督官は「崩れるまで掘れ」と言った。玄関には、ひび割れた鉄兜が置いてある。内側には乾いた血の色が残っていた。
今日は畑の土が盛り上がるたび、芋が一つ、ころりと現れる。
土人形は無表情だが、働きぶりは鉱山の監督官よりよほど信用できた。昼休みを奪わないし、危険なら勝手に止まる。何より、ガルドに穴へ入れとは言わない。
腰の金属板が低く鳴った。
《芋八箱、食料組合が受領。売上金を送金しました》
これで家賃も、冬の薪も足りる。鉱山では危険手当の名で渡された銀貨が、治療費に消えることも多かった。だが畑の売上は、傷を増やさず残る。ガルドはその当たり前を、黒茶の苦味と一緒にゆっくり飲み込んだ。ガルドは茶をすすり、空になった木箱が転送陣から戻るのを眺めた。
そこへ、別の警報音が重なった。
『第三坑道で落盤。人手不足だ。今すぐ来い』
鉱山長からの呼び出しだった。
ガルドは兜のひびを見た。あの日、落石を受けて倒れた彼に、鉱山長は治療費ではなく欠勤届を投げつけた。
『救助隊を呼べ』と返す。
『金がかかる。お前は坑道を知っている』
『知っているから、入らない』
『仲間を見捨てるのか』
ガルドは立ち上がり、町の救助隊へ位置情報だけ転送した。それから鉱山長には、もう一文送った。
『人を安く使うために、命を高く払わせるな』
通信板を井戸の横へ伏せる。
畑では最後の芋箱が閉じ、土人形たちが地中の休眠室へ戻っていく。ガルドも今日は働かない。朝から沸かしておいた湯船へ向かい、兜の代わりに手拭いを頭へ載せた。
肩まで沈むと、土の下も、家の中も、ようやく静かになった。