室内の四人目

玖珠川玲は、投票用紙に《梟面》と書いた。

正面の司会者が初めて身じろぎした。黒い梟の仮面。その奥の声だけが、三人をここまで追い詰めてきた。

「ふざけるな。候補は参加者だ」

「規則を読み直せ」

玲は紙を折り、透明な箱へ入れた。

円形室には玲、馬庭宗介、白瀬瑠衣、そして梟面。机にはなぜか四本のペンと、四つの投入口があった。三人用のゲームなら余るはずの一本を、玲だけが最初から気にしていた。壁の文章は短い。

《この部屋にいる全員は、この部屋にいる一人の名を一票で指名する。最多得票者を処刑し、それ以外を解放する》

梟面はこれまで、自分を「主催者」としか呼ばなかった。名前を明かしていない。だから玲は仮面に刻まれた呼称を書いた。

馬庭が低く言う。「機械が通称を名と認める保証は?」

「さっき音声が『梟面より説明する』と言った。システムが登録名として使った」

残り二十秒。玲は瑠衣へ視線を送った。

「私たち三人が互いに疑えば、二票で誰かが死ぬ。でも部屋には四人いる」

「俺は審判だ!」梟面が机を叩く。

「規則には審判という除外がない」

瑠衣が《梟面》と書いた。馬庭も続く。

梟面は拳銃を抜いた。だが天井から伸びた白い腕が、彼の手首を先に固定した。四つ目の投入口が点灯する。

《未投票者一名。残り五秒》

「私は投票権を持たない!」

《この部屋にいる全員です》

仮面の男は震える手で玲の名を書いた。

集計結果。

梟面、三票。

玖珠川玲、一票。

床から処刑用の銃口がせり上がり、初めて仮面の男へ向いた。観客席だと思われた監視窓の照明まで、彼を被告のように照らした。

「待て、私はゲームを運営している!」

玲は首輪が外れる音を聞きながら答えた。

「だから穴ができた。参加者を騙すことばかり考えて、自分が文章の外にいるつもりになった」

梟の仮面が照準光に赤く染まる。

玲は出口の前で振り返った。

「多数決で最も危険なのは、票を数える人間が、自分は数えられないと思っていることだ」