家族内表彰式_該当者多数

家族内表彰式、該当者多数

【開催理由】

 父が夕食後、「この家では誰も俺の苦労に感謝しない」と発言。

 母が「では全員分、表彰しましょう」と返答。

 急きょ、家族内表彰式を開催した。

【最優秀・誰も気づかないうちに補充している賞】

 候補者、母。

 トイレットペーパー、洗剤、麦茶などが、なくなる直前に補充される。

 母は受賞を辞退。

「買い物メモを冷蔵庫へ貼るのは弟。空になりそうだと気づくのは祖母」

 共同受賞へ変更。

【最優秀・家を壊れないようにしている賞】

 候補者、父。

 緩んだねじ、詰まった排水口、鳴かなくなった玄関の蝶番を直す。

 父は胸を張った。

 姉から異議。

「直したあと、工具を床へ置きっぱなしにする」

 減点制度はないため、受賞は維持。

【最優秀・空気を悪くしてから戻す賞】

 候補者、姉。

 家族の問題を最初に指摘して全員を怒らせ、最後には話し合いを始める。

「褒めてないよね?」

 審査委員会は回答を保留。

【最優秀・何もしていないようで全部見ている賞】

 候補者、祖母。

 帰宅した人の顔を見て、夕食を多くするか、放っておくかを母へ小声で指示する。

 祖母は「年寄りは暇だから」と辞退。

 弟が反対。

「僕がテストを隠してると、最初に気づく」

「隠すな」

【最優秀・笑われる役を引き受ける賞】

 候補者、弟。

 家族喧嘩の最中に、関係のない駄洒落を言う。九割は滑るが、一割で誰かが吹き出す。

「成功率、低くない?」

「必要なときに一回当たればいい」

 全会一致で受賞。

【最終結果】

 最優秀家族賞は、該当者を一人に絞れず。

 父は「最初に苦労を訴えた自分が代表」と主張したが否決。

 母が空き瓶の蓋で作ったメダルを五個並べた。

「感謝って、一人だけ立たせるものじゃないのね」

 父は少し不満そうに、自分のメダルを首へかけた。

 その夜から、家では小さな表彰が増えた。

「ゴミ袋を替えたで賞」

「黙って待ったで賞」

「謝るのが昨日より早かったで賞」

 誰かに感謝されるほど立派なことをしていない日もある。

 それでも家族は、何もしていないように見える人まで含めて、毎日の暮らしを少しずつ支えていた。

 議事録の最後には、祖母の字でこう書かれた。

〈次回開催、毎日。賞品、言葉だけ〉