心臓に咲くもの
私は、ルメアの心臓に咲いた灰花病である。
治す薬はない。根は血管を伝い、花弁は肺を白くし、最後には鼓動を止める。私は望んで彼女を苦しめているのではない。ただ咲くように生まれ、咲く以外のことを知らない。
ルメアには、カシルという青年がいた。
彼は王宮庭園の植木師で、病人の部屋へ毎朝、香りのない花を持ってきた。匂いは咳を誘うからだ。二人は天気や鳥や、庭の噴水に住み着いた蛙の話をした。恋の話だけはしなかった。
ルメアは彼が好きだった。
それは私にはよく分かった。カシルが扉を開けるたび、心臓は速く打ち、私の茎まで震えた。
だが彼女は告白しなかった。
「死ぬ人に好きと言われたら、残る人は返事を人質に取られる」
そう侍女に話していた。
夏の終わり、医師は冬を越せないと告げた。
その日からカシルは来なくなった。
ルメアは平気なふりをした。窓辺の花を捨てさせ、彼の名を口にしなかった。けれど鼓動は、扉の音がするたび期待した。私はそのたび少しずつ咲いた。
七日目の夜、カシルが泥だらけで現れた。
両腕には、庭から掘り上げた若い杏の木を抱えていた。
「何をしているの」
「君の窓から見える場所へ植える」
「来ないと思った」
「逃げていた。君が死ぬのを見たくなくて」
「なら、逃げて」
「嫌だ」
彼は寝台の前に膝をついた。
「ルメアが好きだ。病気になる前から。死ぬから言うんじゃない。死ぬと知っても、言わない理由がなくなっただけだ」
彼女の心臓が強く打った。
私の花弁が一枚、肺の奥で開いた。
「返事を人質にしたくないの」
「返事がなくても残る。返事があれば、もっと残る」
ルメアは泣き、咳をし、それでも笑った。
「私も、あなたが好き」
それは私が聞いた、もっとも明るい鼓動だった。
彼女は冬の最初の雪の日に死んだ。
私は心臓を止め、同時に私自身も枯れた。
春、窓の外の杏が初めて花をつけた。カシルはその下に椅子を置き、毎日しばらく座ったという。
私は病であり、二人から時間を奪った。
それでも最後の季節まで奪うことはできなかった。
ルメアの胸に最後まで咲いていたのは、私ではない。
名を告げたことで初めて形を得た、二人の恋だった。