木曜日だけの冷凍庫

叔母の佐江は、毎週木曜日に祖母のための作り置きをする。

色とりどりの小鉢を二十個並べ、日付と栄養を書いたラベルを貼る。その写真を私は撮り、〈仕事をしながら在宅介護。叔母を尊敬する〉と投稿していた。

祖母は写真の間、冷凍庫の前で手を組んで立つ。なぜか料理には触れず、「今日は木曜ね」と三度確認する。佐江は、認知症だから曜日に執着するのだと笑った。

もう一つ妙なのは、撮影が終わると叔母がラベルを全部剥がすことだった。インクが容器につくと不衛生だから、と聞き、私は納得した。冷凍庫には子ども用の鍵がかけられ、祖母が一度に食べないよう暗証番号は佐江しか知らない。

離れて暮らす従兄から、祖母が痩せたと連絡が来た。何もしない人ほど数字だけで責める。私は木曜の写真をまとめ、佐江がどれほど献身的か説明した。木曜の撮影では祖母にエプロンを着せ、空の器を前に笑わせていた。『ごちそうさま』が先に出ると、認知症らしい愛嬌だと思って撮り直した。叔母が私へ渡す交通費も、祖母の財布から出ているとは知らなかった。

叔母は疲れた顔で、「あなたが分かってくれて助かる」と私の手を握った。

火曜日、介護認定の訪問が急に入った。佐江は仕事で戻れず、私は証拠を見せるため祖母宅へ職員を案内した。

冷凍庫は空だった。

台所のごみ箱には、木曜に撮った料理が容器ごと捨てられていた。写真映えしない茶色い煮物まで、蓋も開いていない。祖母は鍵の前に座り、職員に小さく言った。

「木曜は、食べていい日なの。写真のあと一つだけ」

佐江は電話で、祖母が勝手に捨てたと主張した。しかし祖母の握力では、硬い蓋も鍵も開けられない。通帳には、食費として毎週引き出された金と、同じ日の佐江の美容院や衣料店の決済が並んでいた。

私は叔母に利用されただけだ。そう言うと、職員は私の投稿画面を見た。

〈口だけの親族に、介護者を責める資格はない〉

従兄を黙らせるために書いた言葉だった。祖母の「お腹が空いた」というコメントも、私が認知症の妄想として削除していた。

祖母が保護された夜、投稿にはまだ、冷凍庫いっぱいの写真が残っていた。

容器のラベルはすべて木曜日で、賞味期限だけが一度も写っていなかった。