橋の中央ですれ違う

東の国と西の国を結ぶ〈薄明橋〉は、十二年に一度、夏至の日の一分間だけ姿を現す。

アイネラは東岸の薬草師、ヴォルグは西岸の水車番だった。

二人が十六歳のとき、初めて現れた橋の中央で出会った。

一分しか話せなかった。

それでも十二年のあいだ、川へ浮かべる灯籠へ手紙を入れ、互いの暮らしを伝えた。

次に橋が現れたら、ヴォルグが東へ渡る。

そう決めていた。

ところが夏至の三日前、西の村を嵐が襲った。

水車が壊れ、ヴォルグの父も足を負傷した。

彼は村を離れられない。

知らせを受けたアイネラは、自分が西へ渡ると決めた。

その手紙を灯籠へ入れたが、増水した川は流れを変え、灯籠は葦へ引っかかった。

ヴォルグもまた、村人に背を押された。

「十二年待った人のところへ行け。水車は皆で直す」

彼は東へ渡る決心をし、その手紙を流した。

だが灯籠が東岸へ着いたのは、橋が消えた翌朝だった。

夏至の正午。

川の上へ銀色の橋が現れた。

アイネラは東から西へ走った。

ヴォルグは西から東へ走った。

中央で二人は出会い、同時に足を止めた。

「どうして来たの」

「君こそ」

事情を理解するのに十秒かかった。

笑うのに五秒。

泣くのに、残り全部が必要だった。

薄明橋は、一度進んだ者を元の岸へ戻さない。

中央を越えれば、橋の流れが反対岸へ運ぶ。

「一緒に戻れない?」

アイネラが訊く。

「次は十二年後だ」

「待つ?」

「また十二年を、橋のためだけに生きるのか」

二人は手を握った。

橋の光が足元から薄くなる。

ヴォルグは東へ、アイネラは西へ進むしかなかった。

すれ違いざま、彼は彼女の額へ口づけた。

彼女は彼の手へ薬草の袋を押し込んだ。

「水車を直して」

「君は父さんを診てくれ」

「分かった」

「今度は待たないで」

「あなたも」

二人は反対岸へ着いた。

橋は消えた。

アイネラはヴォルグの父を治し、西の村で薬草園を作った。

ヴォルグは東の町で水車を建て、彼女の母へ毎年薪を届けた。

互いが守りたかった場所へ、互いだけがたどり着いた。

十二年後、橋は再び現れた。

二人は岸へ行かなかった。

それぞれの土地で、もう自分を待つ人々がいたからだ。

運命は二人を引き離したのではない。

同じ瞬間に同じ愛を選ばせ、反対方向から橋へ走らせただけだった。

一分早く手紙が届いていれば、二人は同じ岸で暮らせた。

届かなかった一分は、十二年より長く、二人の間に残った。