特殊清掃予約票

【社内確認記録】

依頼物件:柳苑レジデンス二〇四号室

作業内容:孤独死後の消臭、体液除去、床材撤去

依頼者:物件所有者

作業希望日:九月十四日

 九月十三日、管理会社から正式な作業依頼あり。

 七十代男性の入居者が室内で死亡し、発見まで約二週間経過したとの説明を受ける。

 現場責任者が予約管理システムを確認したところ、同じ作業内容が八月二十九日の時点ですでに登録されていた。

 八月二十九日は、警察発表による死亡推定日の三日前である。

【所有者への確認】

「高齢の方なので、いずれ必要になると思い、仮予約しただけです」

 所有者はそう回答。

 死亡時期を事前に知っていたわけではないと主張した。

【現場報告】

 玄関の内鍵は破損していない。

 室内には飲みかけの睡眠薬と、所有者名義の差し入れ弁当が残されていた。

 床材を剥がすと、その下からさらに新しい合板が現れた。

 合板を撤去したところ、異なる年代の体液痕が三層確認された。

 管理会社の説明では、二〇四号室における死亡事案は今回が初めて。

【過去予約照合】

 二〇四号室について、同じ所有者から以下の予約履歴が見つかった。

三年前 消臭・床材交換

六年前 消臭・床材交換

九年前 消臭・床材交換

 いずれも作業前日にキャンセル。

 理由欄には〈入居者が退去したため〉と記載されている。

 当時の入居者三名は、いずれも現在まで所在不明。

 住民票上は、二〇四号室から転出した記録がない。

【追加事項】

 所有者から現場責任者へ、個人の携帯電話で連絡あり。

「床下の古い染みは、見なかったことにしてください。追加料金は払います」

 責任者が警察へ相談すると伝えると、所有者は電話を切った。

 十分後、会社の予約管理システムに新規依頼が登録された。

依頼物件:現場責任者自宅

作業内容:孤独死後の消臭、体液除去、床材撤去

依頼者:柳苑レジデンス所有者

作業希望日:本日深夜

 備考欄には、責任者の自宅の間取り、寝室の位置、帰宅予定時刻が正確に記載されていた。

【最終記録】

 二十三時四十分、責任者から事務所へ連絡。

「玄関前に、管理会社の人が来ている。予約内容の確認だと言っている」

 通話の途中、呼び鈴が鳴った。

 続いて、鍵の開く音がした。

 翌朝、予約票の状態は自動で更新されていた。

〈現場確認済み〉

〈臭気発生前のため、作業日は三週間後を推奨〉