白百合の配達

私は、死者のために花を運んだ。

白百合を十二本。葉を落とし、茎を同じ長さに切り、薄い灰色の紙で包んだ。依頼主は、亡くなった男の妹だった。葬儀は明日だが、兄が最後まで暮らした部屋に、今夜だけ花を置きたいという。

玄関には制服の警官が立っていた。事件現場はまだ封鎖中で、花だけなら、と中へ通された。私は靴に紙の覆いをかけ、百合を胸の前に抱えた。

「花瓶はありますか」

警官が台所から青い陶器を持ってきた。私は首を振った。口が広すぎる。

「茎が散ります。細いもののほうが、きれいに立つので」

結局、廊下の棚から、首の長いガラス瓶を選んだ。中へ水を注ぐと、百合の匂いが冷えた部屋いっぱいに広がった。

居間の絨毯には、人の形にだけ色の濃い跡が残っていた。私はそこを見ないようにしながら、玄関から窓まで床板を数えた。七枚、八枚、九枚。十枚目だけ、端に小さな欠けがある。

「何か探しています?」

「花を置く向きを見ているんです。光の入るほうが長持ちしますから」

警官は納得したように窓を開けた。冬の風が入り、百合の花粉が一粒、黒いテーブルに落ちた。

私は花瓶を窓辺へ置き、少し離れて眺めた。白い花は、部屋の暗さを吸い込んでいるようだった。男はこの窓の前で、毎朝コーヒーを飲んでいたという。妹は電話で、兄は花が苦手だった、と笑っていた。だからこそ、最後くらいは部屋を明るくしたいのだと。

私は百合の向きを一本ずつ直した。正面を向く花、横顔を見せる花、まだ固い蕾。十二本目だけは茎が太く、瓶の細い口につかえた。力を入れて押し込むと、ガラスが小さく鳴った。

警官が廊下へ呼ばれた。鑑識が追加の写真を撮るらしい。私は一人になった。

窓から数えて十枚目の床板へ膝をつく。欠けに爪を差し込み、板を持ち上げた。昨夜隠したナイフは、血を乾かしてそこにあった。

私はそれを灰色の紙で巻き、十二本目の太い茎の中へ滑らせた。白百合は、死者に手向けるには細すぎる花瓶で、まっすぐ私の罪を抱いて立った。