砕けた盾の証言
「弱点も性能も見えず、最後に傷つけたものしか分からない? 無能だ」
探索隊長ラザクはハイゼンの荷を城外へ放り出した。
【痕跡鑑定:傷ついた対象に最後の損傷を与えた存在を表示する】
戦いが終わった後に犯人を知っても遅い。そう言われ、ハイゼンは辺境要塞から追放された。
門を出た直後、背後で轟音がした。
魔王軍の砲撃にも耐えた白鋼の大盾が、内側から砕けたのだ。破片は敵側ではなく兵舎へ飛び、三人の衛兵を壁へ叩きつけた。城壁を守る結界核も同時に沈黙し、敵軍が谷へ雪崩れ込んでくる。予備盾を上げるまで十分。黒砲の再装填には八分。裏切り者を探す猶予は、ほとんどなかった。
「外から撃ち抜かれた!」
兵たちは敵の黒砲を指さした。だが、女将軍イゼルダは盾の破片を拾い、眉をひそめる。外側に煤がなく、内側だけが白く焼けていた。
ハイゼンは追放門をくぐり直した。
「一片、貸してください」
ラザクが剣へ手をかける。
「貴様の出番ではない」
「だからこそです。もう壊れた後ですから」
破片に触れると、文字が浮かんだ。
――最終損傷者:従軍司祭ケルノ。
要塞中の視線が、祈祷台の司祭へ集まった。ケルノは毎朝、盾に強化の祝福を与えていた男だ。
「祝福が損傷になるものか!」
司祭は叫ぶ。ハイゼンは別の破片、結界核の留め具、崩れた床石を順に鑑定した。すべて同じ名を示した。
前世で事故調査に携わった彼は、壊れ方が一つの証言より雄弁だと知っていた。白鋼は外から押されておらず、内側から膨張している。祝福に見せかけ、毎日少しずつ破壊の魔力を染み込ませたのだ。
ケルノが祈祷杖を振り上げた。だがイゼルダの剣が先にその喉へ届く。
司祭の袖から敵軍の通信石が落ちた瞬間、城壁の外で黒砲が火を噴いた。
「第二盾を上げろ!」
将軍の号令で予備盾が閉じ、砲弾を受け止める。奇襲を失った敵軍は谷底で足を止めた。
静まり返った中、ラザクが追放命令書を丸めた。
イゼルダはそれを奪い、砕けた盾の穴へ投げ捨てる。
「戦の前に弱点を見る者は多い。戦の後から裏切り者を引きずり出せる者は少ない」
女将軍はハイゼンへ要塞の銀鍵を差し出した。
「戻れ。今後、この城で壊れたものはすべて、おまえに証言させる」