私は最後の一粒です
私は、弁当箱の隅に残った一粒のご飯だ。
毎日、持ち主の少女は最後まで食べようとした。けれど昼休みの終わりには、決まって数粒が残った。
朝早く働く父親は、娘が大きくなったのだからと、弁当箱いっぱいにご飯を詰めた。少女は父親が眠い目をこすりながら作る姿を知っていたので、「多すぎる」と言えなかった。
友達が空の弁当箱をのぞいた。
「また、最後だけ苦しそうだね」
少女は私を箸でつまみ、落とし、もう一度つまんだ。
「残したら悪いから」
「でも、毎日苦しくなる量を入れてもらうのも、もったいなくない?」
友達は笑わなかった。自分の弁当箱を見せた。ご飯は少なく、別の小さなおにぎりが一つ入っている。
「私は朝、食べられる量が分からないから、最初を少なくしてる。足りなかったら、これを食べる」
その夜、少女は父親の帰りを待った。
「明日から、ご飯を少し減らして」
父親は驚いた。
「足りないだろ。午後、お腹がすくぞ」
「足りなかったら、小さいおにぎりを持っていきたい」
父親はしばらく黙った。娘が自分の弁当を嫌っていると思ったのかもしれない。
少女は続けた。
「お父さんのご飯を残したくないから、食べきれる量にしたい」
父親は弁当箱を手に取り、今までの深さを測るように眺めた。
翌朝、弁当箱のご飯は七分目だった。横には、梅干し入りの小さなおにぎり。
ふたの裏に付箋があった。
〈少なかったら食べてください。
多かったら、おにぎりは帰ってきても大丈夫です〉
昼休み、少女はおかずとご飯をゆっくり食べた。
私は最後まで残った。
また苦しいのかと思ったが、少女は友達との話を終えてから、私を箸で拾った。
「ちょうどよかった」
私は口の中へ運ばれた。
最後の一粒が食べられたのは、少女が我慢したからではない。
友達が量を変える方法を見せ、少女が父親へ言葉を渡し、父親が愛情の大きさと弁当の重さを分けて考えたからだ。
空になった弁当箱の横には、小さなおにぎりが残っていた。
放課後、少女は部活の前にそれを食べた。
食べ物を残さないために必要だったのは、大きな胃袋ではない。
「多い」と言える勇気と、「分かった」と受け取る親切だった。