赤いウインナー
造園会社で働く凌平の弁当には、毎日一本だけ赤いウインナーが入っている。
妻の光莉が作る弁当は、玄米、焼き野菜、鶏胸肉と健康的だ。その隅で、鮮やかな赤だけが場違いに光る。
「もう子どもじゃないんだから」と同僚には笑われる。けれど、凌平が頼んで入れてもらっていた。
幼い頃、母は早朝から市場で働き、弁当は祖父が作った。料理の苦手な祖父は、白飯に醤油を塗った海苔を載せ、赤いウインナーを一本焼いた。それだけの日もあった。蓋を開けると煤けたような匂いがして、ウインナーの端には包丁で不器用な切れ目が入っていた。
その祖父が、近くの施設へ移ってきた。
休みの日、凌平は二人分の弁当を作った。玄米を炊き、野菜を焼き、最後に赤いウインナーをフライパンへ並べる。切れ目を入れすぎて、焼くうちに花のように開いた。
施設の中庭で包みを広げる。祖父は箸を持ったまま、「豪華だな」と言った。
「じいちゃんのよりは」
「俺のは茶色かったからな」
二人は笑った。祖父は鶏肉を半分残したが、赤いウインナーは最初に食べた。
「これは昔の味だ」
「ただの安いやつだよ」
「安いものほど、変わらん」
風が吹き、弁当の仕切りに使ったレタスが揺れた。土を入れ替えたばかりの花壇から湿った匂いがする。
帰宅すると、光莉が空の弁当箱を開けた。
「どれから食べてた?」
凌平が答えると、「やっぱり」と笑った。翌朝の弁当には、赤いウインナーが二本入っていた。一つは凌平の分、もう一つは、祖父の話を聞いた光莉が自分でも味見したくなった分だった。
油の匂いが残る台所で、二人は焼きたてを半分ずつ食べた。
次の日曜、凌平は施設へ弁当箱を取りに行った。洗われた箱の隅には、落としきれなかった赤い油が一筋ついている。祖父は窓辺で眠っていた。凌平は起こさず、箱を膝に載せて座った。日の当たった蓋は温かく、そこから昨日の土とウインナーの匂いがした。