鉄粉の昼と焼きそばパン
鍛冶師ボルグンは、現代区の工場見学で一番つまらなそうな顔をしていた。
電気で動く炉も、火花の少ない切断機も気に入らない。昼休みになり、案内役が売店で「焼きそばパン」を渡すと、ついに鼻を鳴らした。
「小麦を焼いたものへ、小麦の麺を挟むのか。石を箱へ入れて運ぶような料理だ」
「まあ、食べてから言ってください」
細長いパンの割れ目には、濃い茶色の麺がぎっしり詰まり、紅生姜が一筋のっていた。ボルグンは作業台の端に腰掛け、両手で持つ。ソースの甘辛い匂いが、鉄と油の匂いに混じった。
一口かじると、柔らかなパンのあとに、もちっとした麺が押し返した。刻んだキャベツがしゃきりと鳴り、紅生姜の酸味が重たいソースを引き締める。
「……石ではない」
「知ってます」
「だが、理屈は悪い」
そう言いながら、二口目は大きかった。
ボルグンの工房では、弟子が一人、今朝から来ていない。昨日、槌の振り方をめぐって怒鳴ったのだ。自分は師匠にもっと厳しくされた。だから正しいと思っていたが、空の作業台を見ると、炉の音まで広く響いた。
「これは、歩きながらでも食べられるな」
「忙しい職人さんの味方です」
「食事くらい座れ」
「今、座ってますよ」
指摘され、ボルグンは黙った。故郷の工房では昼も炉を止めず、片手で干し肉を齧る。弟子にも同じことをさせていた。
パンの端から麺が一本こぼれ、作業着へ落ちた。拾おうとして、ふと笑う。麺までパンの中で働かせる料理なのに、食べる者には休む時間を作るらしい。
食後、彼は売店で二つ追加した。
「持ち帰りですか」
「一つは俺の夕飯。もう一つは、来なかった弟子の家へ置く」
「言葉も添えます?」
「明日は炉を昼に止める、と」
弟子が初めて焼いた歪な釘を、ボルグンは今も工具箱へしまっている。怒鳴るより先に、その釘を見せてやればよかったと、ようやく思った。
工場を出るころ、紙袋はまだ温かかった。ソースと青海苔の匂いが、煤けた髭にまで移っている。ボルグンは袋を潰さぬよう、槌より丁寧に抱えて歩いた。