降ろす順とは逆の荷台

北街道の五つの砦へ、解毒薬六十箱を夜までに届けなければならなかった。

ところが軍の荷車は、最初の砦の箱から順に積まれていた。先に使う十二箱は荷台の最奥、その上に残り四十八箱が重なる。いつもの配送では、砦に着くたび全箱を道へ下ろし、必要な箱を抜き、また積み直す。五か所回れば四刻を失う。

犬塚玖実が積み直しを命じると、兵站官は眉を吊り上げた。

「出発を遅らせる気か。箱には砦名が書いてある」

「だから逆にします」

玖実は第五砦の十二箱を一番奥へ置いた。その手前に第四、第三、第二。第一砦の箱だけを荷台の口へそろえる。兵たちは意味が分からないまま、十分で六十箱を積み替えた。

第一砦に着くと、御者は幌を上げた。目の前に第一砦の印が十二個並んでいる。誰も荷台へ登らず、二人で渡すだけ。砂時計の砂が半分落ちる前に、車は再び走り出した。

第二砦でも、次の十二箱が口に現れた。第三でも同じだった。

第五砦へ着いたのは、日没より一刻早い。従来ならまだ第三砦で箱を積み直している時刻だ。総所要時間は四刻半から二刻十分。割れた瓶は零、取り違えも零だった。

第一砦で止まった時間は四分、第二は三分、第三も三分。これまで一か所ごとに四十八箱を降ろしていた兵たちは、荷台の口へ現れる十二箱を渡すだけでよかった。道端へ仮置きしないため、泥をかぶった箱も、別砦へ紛れた箱もない。

第四砦では、敵影を見た見張りが門を閉めかけた。それでも荷下ろしは五分で終わり、車は戦闘前に街道へ戻れた。従来の積み方なら、全箱を門外へ広げたまま立ち往生していたはずだ。

五砦の受領札を並べると、十二、十二、十二、十二、十二。箱数だけでなく、到着順まで荷台の奥から手前へ正確に現れていた。兵站官が責めていた御者の腕は、一度も変わっていない。変えたのは出発前の十分だけだった。

熱に震えていた斥候がその場で薬を飲み、呼吸を戻す。兵站官は余った時間を示す砂時計から目を離せなかった。

「次の便も……同じ積み方でよいのか」

玖実は空になった荷台の奥を指した。

「最も遠い砦の荷からです」

砦司令は五枚の配送命令書を破り、一枚に書き直した。

「北街道の積載順は、今日から犬塚玖実が決める。兵站士官として採用だ」