雷狼の爪に刺さった銀片

雷狼ヴォルテは、王宮の雷除けとして北塔に住んでいた。

人が近づけば青白い火花を散らすため、世話は食事を鉄格子越しに投げ込むだけ。三年もの間、誰にも懐かず、王子の獣使いさえ尾を巻いて逃げたという。

靴磨きの少年ロイグが北塔へ呼ばれたのは、罰だった。廊下で貴族の長靴に泥を残し、監督官に「雷狼の檻でも磨いてこい」と追いやられたのだ。

格子の中では、銀灰色の狼が低く唸っていた。足元で火花が弾け、兵士たちは扉の外から早く入れと囃す。

しかしロイグには、雷狼が左前足を舐めるたび、爪の間で何かが光るのが見えた。磨き職人だからこそ分かる。折れた銀鋲だ。きっと以前、見栄えのために付けられた首輪か床飾りの欠片だろう。

彼は磨き箱を置き、床に腹ばいになった。

「俺も、靴の中に小石が入ったまま働かされるのは嫌いだ」

ヴォルテが牙をむく。ロイグは逃げず、掌を見せた。武器はない。ただ細い靴用のやっとこと、蜜蝋だけ。

「抜いたら、もう触らない」

長い沈黙の後、雷狼は格子際まで来て、問題の足を一寸だけ差し出した。兵士が悲鳴を上げるほど火花が散ったが、ロイグは煤けた指で肉球を支えた。

銀片は深かった。やっとこでつまみ、一気に引く。雷が塔の窓を白く染めた。だが噛みつかれる代わりに、熱い鼻息が彼の髪を揺らした。

傷へ蜜蝋と薬草粉を詰めると、ヴォルテは初めて四本の足で立った。そして檻の錠へ爪を触れ、雷で溶かす。

兵士たちが逃げ散る中、雷狼はロイグの前に座った。額から走った稲妻形の印が、少年の右手へ移る。

「靴磨きではなく、王獣の相棒か」

駆けつけた国王が笑った。

監督官は功績を自分の指導の成果にしようとしたが、ヴォルテは彼の磨き上げた長靴へ一筋だけ雷を落とした。靴底がきれいに剥がれ、兵士たちはとうとう笑いをこらえきれない。ロイグは仕返しを頼んでいないと狼を叱ったが、その声には初めて遠慮がなかった。

ロイグの返事より早く、ヴォルテはその膝へ大きな顎を置いた。銀灰の毛は雨上がりの石より滑らかで、じんじんする温もりと誇らしい重さが両腿を押した。