黒い服の家業参観

 うちは葬儀屋です。

 でも学校の「家の仕事を紹介しよう」では、花屋と書きました。祭壇に花を飾るから、全部嘘ではありません。

 友達の家はケーキ屋、自動車工場、動物病院。

「葬儀屋って、人が死なないと儲からないんでしょ」

 前に言われたことがありました。

 だから黒い服の仕事は、家の外では秘密にしました。

 冬休み、同じ班の子のおじいちゃんが亡くなりました。お葬式をしたのは、うちでした。

 受付で会ったその子は、ぼくを見て驚きました。

「花屋じゃないの?」

「花も使う」

 うまく説明できず、ぼくは奥へ逃げました。

 父は、おじいちゃんの眼鏡を白い布で拭き、少し曲がった位置を直していました。母は控室の暖房を強め、泣いている親戚へ温かい茶を出しました。姉は、小さな子が転ばないよう、長い靴ひもを結び直しました。

 誰も「仕事だから」とは言いませんでした。

 式が終わったあと、その子がぼくを捜しに来ました。

「おじいちゃん、寝てるみたいだった」

「うちの父がやった」

「最後に顔を見ても、怖くなかった」

 ぼくは何と答えればいいか分かりませんでした。

「うち、人が死んだら儲かる家じゃないよ」

 言うと、その子は首を振りました。

「知ってる。うちが困った日に、開いてた家」

 次の学期、もう一度、家の仕事を紹介する時間がありました。

 ぼくは白い手袋を持って教壇へ立ちました。

「うちは葬儀屋です」

 教室が少し静かになりました。

「亡くなった人を運んだり、式を作ったりします。でも一番多い仕事は、残った人が何をしたらいいか分からないとき、一緒に順番を考えることです」

「怖くないの?」

 聞かれました。

「怖い日もある。でも、怖い人のそばにいる仕事です」

 父は、ぼくに継げとは言いません。

「嫌なら別の仕事をしろ」と言います。

 ぼくも、まだ葬儀屋になるとは決めていません。

 ただ家へ帰ると、黒い服を干すのを手伝うようになりました。

 人の悲しい日に働く家族を、もう花屋とだけは書かないつもりです。