またはを選んだ奴隷
「契約文の接続詞だけ正確に分かる? 無能な読書家だな」
商業法院の鑑定で、オグレンは灰印を押された。
【能力:《つなぎ語》――触れた契約文一つについて、接続詞一語の法的な働きを正確に理解する】
金額も罰則も読めず、一日に一契約だけ。彼は奴隷市場の帳簿係へ落とされた。
ある日、鉱山奴隷千人の売買契約が王都へ届いた。
買い手は鉄侯爵ドランヴァ。契約には古代の血印があり、破れば署名者の心臓が止まる。鉱夫たちは「鉱山で働き、または主人の命令に従う」と誓わされていた。法院長は、どちらも結局は主人への服従だと判断した。
契約締結の夜、鉱山が崩れた。
地下には千人が残り、侯爵は救助より先に、秘密の金庫を掘り出せと命じる。従わなければ血印が彼らを殺す。
オグレンは契約書の「または」へ指を置いた。
《つなぎ語》。
古代法の「または」は、現代の二者択一ではなかった。署名者が自分で一方を選び、選ばなかった義務を消滅させる権利を示す語だった。
「全員、今から『鉱山で働く』ほうを選んでください」
鉱夫たちは怒鳴った。
「その鉱山が崩れたんだぞ!」
「だから働く場所を変えます。鉱山とは、鉱石を採る穴ではなく、鉱山共同体そのものです」
オグレンは避難坑の入口へ、鉱山名を刻んだ板を移した。鉱夫たちは金庫ではなく、仲間を救い出すために掘る。主人の命令には従わない。だが自分たちの鉱山で働いているため、血印は罰しなかった。
夜明けまでに千人全員が地上へ出た。
ドランヴァが違反だと叫び、血印を作動させる。だが選ばれなかった「主人の命令に従う」という義務は、すでに契約から消えていた。逆に、契約を偽って行使した侯爵の血印が黒く燃え、彼自身の腕を縛った。
法院長が無能札を隠そうとする。
鉄法王ミュレダはそれを拾い、「または」の上で二つに裂いた。
「千人を縛った鎖は鉄ではなく、一語だった」
彼女はオグレンへ法院の黒印を渡す。
「今日から契約を読む者は、数字より先に、おまえへ『何と何をつないだか』を聞け」