よく眠ったと送る

【日曜ブランチ】

午前八時四十六分 友人A〈十一時に駅の南口ね!〉

午前九時十二分 友人B〈もう電車乗った笑〉

午前十時三分 友人A〈榛名、起きてる?〉

午後零時二十八分 友人B〈先入ってるよー〉

午後一時十六分 友人A〈無理そうならまた今度にしよ〉

御厨榛名がその画面を見たのは、午後二時四十一分だった。

頬にシーツの線がつき、昨夜着ていたTシャツの裾が腹の上までめくれている。目覚ましは止めた記憶すらなかった。テーブルには、朝飲むつもりで買った小さな野菜ジュースと、店の候補を書いた付箋が残っていた。

グループにはその後、料理の写真が六枚届いていた。丸いパン、半熟卵、湯気の立つスープ。最後の一枚には、空いた椅子が少しだけ写っていた。偶然だと分かっていても、そこが自分の欠席の形に見えた。

榛名は返信欄に〈ごめん、体調悪くて〉と打った。嘘ではない気もした。こんな時間まで眠るほど疲れていたのだから。でも、熱も咳もない。〈昨日仕事が遅くて〉に直した。これも本当だったが、言い訳として整えた途端に薄く感じた。

二つとも消す。未読件数は三十七。友人たちが怒っている様子はない。それなのに、自分だけが欠席届の理由を審査していた。

榛名は台所で湯を沸かし、粉末スープを作った。湯を入れすぎて味が薄い。パンの代わりにクラッカーを二枚浮かべると、すぐに柔らかく沈んだ。

スマートフォンへ戻り、〈今起きた。びっくりするくらいよく眠った。今日はごめん、また誘って〉と送った。

既読はつかなかった。二人は買い物でもしているのだろう。返事のない数分が、さっきまでより少しだけ静かだった。

榛名は追加の説明を送らず、スープを飲んだ。約束を守れなかったことは消えない。けれど、眠った時間を病名に変えなくてもいい。

送信した文の「よく眠った」だけが、少し自慢のように見えて不安になった。榛名は取り消しを押さず、スマートフォンを伏せた。昼の店へ行けなかった自分と、長く眠れた身体は、同じ一日の中にいてもいい。どちらかを悪者にしなければ説明できないわけではなかった。

今日の自分について言えることは、よく眠った。それだけで、いったん十分だった。