ブーケより重い返信
凛花のもとへ、七年ぶりに真琴から招待状が届いた。
高校では毎日一緒だった。大学二年の冬、凛花が付き合っていた人と真琴が二人で会っていたことを知るまでは。
「相談されただけ」と真琴は言った。恋人も同じことを言った。何があったのか、最後まで確かめなかった。凛花は二人とも連絡先を消し、地元の集まりにも出なくなった。
招待状の宛名は、昔の丸い字で書かれていた。中には定型文のほかに、小さな紙が一枚入っていた。
〈来てほしい。謝りたいことがある。でも、式を謝罪の場所にするのは違うとも思ってる。だから、出席でも欠席でも、あなたの返事を受け取ります〉
狡い、と凛花は思った。選択をこちらへ返し、どちらでも受け止める顔をしている。七年前と同じだ。自分だけが決める役にされる。
返信期限の夜、テーブルには二件のメッセージが並んでいた。
母からは〈真琴ちゃん結婚するんだって。昔みたいに仲直りできるといいね〉。
同僚の苑子からは〈行かなくていいよ。傷ついた側が大人になる必要ない〉。
どちらも優しかった。どちらを選べば、凛花は正しい被害者でいられるのか。
窓の外で、終電へ急ぐ人の靴音が続いていた。凛花は返信はがきの出席へ丸をつけた。すぐに黒く塗りつぶし、今度は欠席へ丸をつけた。それもまた消した。紙が毛羽立ち、祝福の言葉を書く欄だけが白く残った。
凛花は新しいはがきを買いに、夜のコンビニまで歩いた。
戻ってから、出席へ一度だけ丸をつけた。余白にはこう書いた。
〈お祝いに行きます。許したからではありません。式のあと、十分だけ話してください〉
仲直りできるかは分からない。話して、もっと嫌いになるかもしれない。思い出して眠れない夜が増えるかもしれない。
それでも凛花は、会わないことで守ってきた七年間を、自分で終わらせてみたかった。
翌朝、はがきを投函すると、胸は軽くならなかった。むしろ、封じていた箱を抱え直したように重かった。
その重さのまま駅へ向かう。凛花は今日から、それを真琴のせいだけにはしないと決めていた。