余計な石

榎並律臣は、市営の最適送別局で二十七年働いた。

死者は火葬されず、骨まで分解され、農業区の栄養材になる。墓は土地を占有し、遺族の悲嘆を長引かせる非合理な設備として禁止されていた。別れは百八十秒。記念品は一つだけ、規格品の電子票が配られる。

娘の千歩が自動交通網の事故で死んだ日も、手順は同じだった。

〈回避不能事故。システム責任なし〉

端末がそう告げ、律臣の前で百八十から数字が減った。千歩の上着に、彼が昔つけ直した青いボタンがあった。律臣は監視カメラが瞬きをする一秒に、それを掌へ隠した。

千歩は石を拾う癖があり、旅行先から持ち帰っては床を傷つけた。律臣は何度も捨てろと叱った。だから最初の石を置いた夜、自分が娘の真似をしていることに気づき、暗い道で初めて泣いた。

帰り道、街路樹の根元へボタンを埋め、小さな石を置いた。除去費用は毎月給与から差し引かれたが、やめなかった。

翌朝、清掃機が石を除去した。彼は仕事帰りにまた置いた。翌日も、その次の日も。形が似ないよう、川原や工事跡から一つずつ拾った。休日には千歩の好きだった青いラムネを飲み、空瓶は持ち帰った。墓に置くものまで規則にされたくなかった。

一年後、木の根元には彼の石だけでなく、赤い硝子片、錆びた鍵、子どものビー玉が置かれるようになった。誰かが誰かを忘れたくないらしかった。

市は一帯を〈非効率物質集積地点〉に指定し、律臣を管理責任者へ任命した。散らばるより一か所に集めたほうが清掃費を削減できる、という理由だった。

律臣は毎朝、石を整えた。電子票にない名前を聞き、紙へ書き、小瓶に入れて土へ埋めた。市はそれを資材分類作業と呼んだ。

定年の日、後任が尋ねた。

「この場所は、正式には何なんですか」

律臣は千歩の木へ手を置いた。幹は、彼の肩より太くなっていた。

「余計なものを置く場所だよ」

娘を惜しむ時間も、名前を呼ぶ声も、役に立たない石も、完璧な市には余計だった。

だから律臣は、余計なものを守ることを、残りの人生の仕事にした。