凍った夕焼け
夕焼けの中で、倉庫番は凍えて死んでいた。
赤い光が棚の隙間から差し、床の霜を染めていた。発見した配送係は、夕方の見回りで冷凍倉庫へ入り、扉の内側に倒れた倉庫番を見つけたという。腕時計は五時四十二分で止まっていた。
不思議なのは、倉庫番の靴底だけが乾いていたことだった。外は一日中雪で、夕方までに出勤した者の靴は皆濡れている。また、赤い光の下では息が白く見えるのに、配送係は「外から夕日が入っていた」と言い張った。冷凍倉庫に窓はない。
扉は故障で内側から開きにくくなっていた。責任者は、修理を翌日に延ばしたことを悔やんだ。彼は午後五時には取引先へ出ており、倉庫番が閉じ込められた時刻には不在だった。車の通行記録も五時九分に正門を出たと示している。
刑事は配送係を疑った。だが配送係は五時半まで別棟で荷積みをしており、複数の作業員が見ていた。残る手掛かりは、倉庫番が握っていた入庫札だけだった。そこには日付と「0540」の数字が印字されている。
倉庫番の爪には黒いゴム片が挟まっていた。故障した扉の取っ手と同じ材質だったが、扉には新しい傷が二本あり、自然に閉じたのではなく、外側から強く押さえられた可能性があった。責任者の手袋だけ、右手の親指部分が裂けていた。配送予定表には、倉庫番が通常より早く一人で出勤する日だと記されていた。
責任者は、夕方五時四十分に入った荷だろうと言った。刑事も最初はそう読んだ。ところが入庫札は二十四時間表記で、夕方なら「1740」となる。数字の横には、早朝便を示す小さな三角印もあった。
赤い光は夕焼けではなかった。停電時に点灯する庫内の非常灯だった。倉庫番の靴が乾いていたのは、雪が降り始める前に出勤したからだ。
腕時計が止まった五時四十二分は、午後ではなく午前。責任者の車が正門を出た五時九分も、朝の記録だった。
刑事は責任者の上着から、非常灯と同じ赤い粉を払った。
凍っていたのは夕焼けではない。朝を夕方に見せかけた者の、崩れたアリバイだった。赤い非常灯だけが、まだ燃えていた。