処刑台の四つ結び
鐘が鳴る一息前、処刑人プルアは斧を置いた。
罪人台に膝をつくデグの首には縄ではなく、黒い紐が四重に結ばれている。処刑の理由は、戦場で魔物の血を飲んだこと。背中の皮膚はすでに盛り上がり、何かが内側から翼を広げていた。
「斬れば、あれごと死ぬ」
司祭が囁く。「結び目を解けば人へ戻る。ただし一つ解くたび、呪いの四分の一が解いた者へ移る。だから誰も触れぬ」
広場の群衆は斧を待っていた。雨避けの軒には、デグと同じ隊章をつけた兵まで並んでいた。彼に命を救われた者も、今は声を上げない。デグだけがプルアを見ず、台の木目を数えている。かつて彼が処刑場から彼女を連れ出し、「斧を握らない日も人間だ」と酒を渡した夜を、プルアは思い出していた。
「仕事をしろ」彼は言った。「おまえの腕なら痛くない」
プルアは最初の結び目へ爪を入れた。
解けた瞬間、デグの背中から隆起が消え、プルアの肩甲骨が焼けた。皮膚の下で硬い骨が一枚、羽ばたく。
群衆がざわめく。
二つ目を解くと、デグの牙が抜けた。プルアの犬歯が唇を裂くほど伸びる。血の味がした。
「やめろ」
ようやくデグが顔を上げた。「俺は命令を破った。おまえまで——」
「私は処刑人だ」
プルアは三つ目をほどいた。「死ぬ者を選ぶのが仕事なら、今日は選び直す」
デグの目が人の丸さへ戻り、代わりにプルアの視界から色が消えた。群衆の首筋だけが赤く浮かぶ。
最後の結び目は喉の真下にあった。解けば、呪いは完全に移る。司祭が護衛へ合図し、槍の穂先が一斉に持ち上がった。
プルアは笑った。処刑台で笑う者を、彼女はこれまで何人も見た。今になって理由が分かる。
四つ目を引いた。
紐が落ち、デグは人の姿で咳き込んだ。プルアの背中では翼が処刑衣を裂き、黒い膜を夜空へ広げる。槍が彼女を囲んだ。
「プルア!」
デグが名を叫ぶ。
振り返った彼女の喉から返事は出なかった。代わりに足元の影が四つ脚で立ち上がり、獣の声で、初めて聞く名を名乗った。