反省しない男
蓮池宗吾は、反省点がゼロだったため仮釈放されなかった。
十二年前、同僚を殺した罪で有罪となった。現場には宗吾の工具があり、口論を聞いた証人もいた。宗吾は一貫して無実を訴えたが、裁判では「不自然なほど冷静」と評された。
刑務所の仮釈放審査では、感情採点AIが罪を思い浮かべたときの悔恨を測る。六十五点以上なら更生の可能性あり。宗吾は何度受けてもゼロだった。
「反省文に合わせて、被害者の顔を想像しろ」
担当官は助言した。
「死なせたと思えば、少しくらい何か出るだろう」
「気の毒だとは思います。でも、私がやったと思うことはできません」
同房者は、出所したければ嘘でも泣けと言った。宗吾は夜ごと練習した。唇を震わせ、肩を落とし、「取り返しのつかないことをしました」と口にした。実際、同房者の何人かは高得点を取り、笑いながら門を出た。だが計測器の前に座ると、宗吾の言葉は喉で止まった。罪を引き受ければ、早く外へ出られる。その代わり、本当に自分を待つ者がいなくなる気がした。
被害者の父、新海剛志は審査記録を毎年見た。
最初は宗吾のゼロ点に激怒した。娘を奪っておいて何も感じない怪物だと思った。だが五年、八年、十年と、宗吾は出所の機会を捨て続けた。
剛志は面会へ行った。面会室へ向かう途中、自分が犯人のために何を確かめようとしているのか分からず、三度帰りかけた。
「なぜ謝らない」
「謝れば、あなたは少し楽になりますか」
「ならない」
「私もです。やっていないから」
宗吾の声は平らだった。AIは〈悔恨ゼロ〉と表示した。剛志には、そのゼロが初めて嘘のない数字に見えた。
彼は娘の遺品を調べ直し、古い端末から別の同僚との脅迫記録を見つけた。再審にはさらに三年かかった。
釈放の日、宗吾は門前で剛志へ頭を下げた。
「信じるのが遅くなった」
「私も、あなたが来るとは思っていませんでした」
記者が二人へ感情測定器を向けた。宗吾の喜びは二十一、剛志の安堵は十八だった。
二人は低い数字のまま、並んで門を離れた。