反省剤の少年

明珍惣一が少年院を出たとき、胸には反省剤の注入器が埋め込まれていた。

自分が傷つけた相手の映像を見ると、罪悪感と羞恥が自動で増幅される。再犯率を下げるための処置で、裁判所は「心を育てる補助輪」と説明した。

惣一は十六歳のとき、仲間と車を盗み、追跡から逃げる途中で停留所へ突っ込んだ。通学中の少女が片脚を失った。処置後、事故映像を見るたび吐き気がし、少女の名を聞くだけで胸が締めつけられた。

出院の日、被害者家族への謝罪面会が組まれた。惣一は用意した文章を読み始めたが、少女の父は途中で止めた。

「今の苦しさは、薬が作っているんだろう」

「でも、申し訳ないと思っています」

「思わされているのかもしれない。そんなものを、娘への償いとして受け取れない」

父の言葉で注入器が反応し、惣一の罪悪感はさらに強くなった。床に額をつけた彼を、少女本人が車椅子から見下ろした。

「謝るたび具合が悪くなるなら、もう謝らなくていい」

「じゃあ、どうしたら」

「知らない。私も、どう生きたらいいか誰も教えてくれないから」

惣一は初めて、自分の苦しさが少女の生活とは何の関係もないと知った。

彼は保護司に頼み、注入器を最低出力にした。反省が薄くなるのが怖かった。翌朝、事故のことを考えても吐かなかった。その平静さは、赦されたようで気味が悪かった。

惣一は義足整備工場へ就職した。最初は償いのつもりだったが、利用者は彼の過去を知らず、普通に納期や値段へ文句を言った。彼は削りすぎた部品を作り直し、調整に来た老人の歩幅を覚え、失敗を隠さず報告した。

三年後、あの少女が工場へ来た。競技用義足の調整だった。惣一は手が震えたが、注入器はほとんど作動しなかった。

「薬が切れた?」と彼女が聞いた。

「弱くした」

「じゃあ、今は何で震えてるの」

惣一は答えを考えた。

「またあなたの人生を勝手に決めるのが怖いから」

彼女はうなずき、走りやすくして、とだけ言った。

調整を終えた義足で、彼女は工場の廊下を走った。惣一はその背中を見ても、吐かなかった。ただ、次はもっと軽くできると思った。

反省は苦しみの量ではなく、明日の手つきを変えることなのだと、ようやく理解した。