右へ曲がれなかった英雄たち

英雄レガードの一行は、地図係トゥリカを追放したその足で、白骨迷宮へ入った。

理由は単純だ。

「紙を見て歩くだけの者に、討伐報酬を五等分する必要はない」

入口から最初の分岐まで、わずか百歩。

右の壁には赤い苔、左には欠けた石像。レガードは迷わず右を選んだ。十分後、同じ赤い苔が現れた。

「環状路か。今度は左だ」

左へ進んで十分後、また欠けた石像があった。

剣で印を刻み、さらに進む。やがて入口の扉へ戻った。外で待つ受付係が、不思議そうに首を傾げる。

「もう討伐を?」

「下見だ!」

受付係は砂時計を返した。入場料は一回ごとに必要だという。二度目の入場では、彼らが刻んだ剣印そのものが別の壁へ移っていた。三度目には荷物係が入口だと思って開けた扉から冷水が噴き、全員ずぶ濡れで戻った。白骨迷宮は敵を出すまでもなく、英雄たちの財布と自尊心を削った。

三度目は魔力探知を使った。すると通路全体が青く光り、分岐が七つに見えた。誰も、どれが本物か分からない。

トゥリカは紙を読んでいたのではなかった。迷宮が数分ごとに壁を動かすたび、足元の傾き、苔の乾き、風の戻りを支援魔術で拾い、地図そのものを書き換えていたのだ。

同じころ、王立測量隊の新任隊員となったトゥリカは、崖崩れで消えた旧道の代わりに、安全な峠道を一本引いていた。

隊長バルメが完成した地図へ王印を押す。

「兵も商人も、この一本で冬を越せる。君の線は剣より多くの命を守るな」

「前の仲間には、線しか引けないと言われました」

「なら、線を読めない者が迷えばいい」

新しい峠道の開通札には、測量隊員全員の名が同じ大きさで刻まれた。商隊の代表はトゥリカへ、最初に通る荷車の先導を頼んだ。彼女が描いた線を、誰も雑用とは呼ばなかった。

夕方、迷宮受付から早馬が来た。

紙には大きく、『至急、案内役として復帰せよ』とある。末尾には、報酬を六等分に戻すとも書かれていた。

トゥリカは王立測量隊の印が乾くのを待ってから返書した。

「英雄一行との案内契約は、追放された時点で終了しています」