四分の一のモンブラン

小比賀冬実は、給料が入るたび、手取りの半分を実家へ送っていた。

母の店が閉じ、弟が専門学校へ進んでから三年。家族は冬実を「頼れる長女」と呼んだ。冬実も、その呼び名を失えば家族の中に居場所がなくなる気がして、振込完了の画面へ毎月同じ金額を入れた。歯の詰め物が取れても、冬物のコートの裏地が裂けても、言わなかった。

今月の給料日、母から「できれば一万円だけ多く」と連絡が来た。冬実は了承のスタンプを押し、銀行アプリを閉じた。その足で、商店街の洋菓子店へ入った。

十五センチのモンブランが、閉店前で三割引きになっていた。一人で食べるには大きい。冬実は迷った末、それを買った。

部屋で箱を開けると、栗の甘い香りが立った。細いクリームの山は冷たく、ナイフを入れると中のスポンジがやわらかく沈んだ。

冬実はケーキを四等分した。

一切れを皿へ置き、残り三切れは保存容器へ移す。いつもなら、全部を小さく切って職場へ持っていっただろう。「食べきれないから」と人へ渡し、自分は端の崩れたところだけで済ませたはずだ。

今日は、皿の一切れをさらに小さくしなかった。フォークを入れる前に、四分の一という大きさを目で確かめた。誰かへ説明しなくても、これは冬実の分だった。

フォークで山の頂上からすくう。栗のクリームが舌に重く、内側のスポンジは驚くほど軽かった。重いものと軽いものが一緒でも、どちらかが嘘になるわけではない。家族を助けたい気持ちと、自分の暮らしを守りたい気持ちも、同じ皿にあっていい。

最後の一口まで食べると、冬実は銀行アプリを開いた。いつもの金額から、歯科の治療費と新しいコート代を引く。母が頼んだ一万円も足さなかった。

送金後、「今月からこの額にします」と一行だけ送った。理由を並べれば、許可を求める文章になりそうだった。

冷凍庫には、三つのモンブランが一切れずつ並んだ。

冬実は空の皿を洗った。四分の一は贅沢ではない。自分の給料の中に、初めて自分の取り分を置いただけだった。