悪魔のPTA役員選挙
【市立小学校PTA臨時総会 議事録】
一、出席者
保護者四十二名、教職員三名、下級悪魔ネビロク一名。
二、議題
来年度役員の選出について。
会長より「立候補者はいらっしゃいませんか」と呼びかけ。沈黙、三分二十秒。
ネビロク氏より質問。
「立候補とは、自ら名を差し出し、契約に血判を押すことか」
会長より回答。
「血判は不要です。ボールペンでお願いします」
ネビロク氏、困惑。氏は地獄で千年、契約書を扱ってきたが、署名だけで休日が奪われる制度は初めてとのこと。
三、選出方法
会長より「立候補がなければ、くじ引きとします」と説明。
ネビロク氏より緊急動議。
「本人の意思なく運命を決めるとは、悪魔的すぎる。異議を申し立てる」
出席者一同より「では立候補を」と提案。
ネビロク氏、安全委員へ立候補。拍手多数。本人のみ着席後に事態を理解。
四、安全委員活動案
ネビロク氏より以下を提案。
(一)通学路の危険箇所に地獄の炎で印をつける。
→道路交通法上の問題があるため否決。
(二)不審者へ七代先まで続く呪いを付与する。
→過剰防衛のため否決。
(三)蝙蝠を飛ばし、上空から児童を監視する。
→有効だが、児童が喜んで追いかけるため保留。
(四)横断旗を黒地に赤文字で作成する。
→視認性が低いため黄色に変更。
五、活動報告
総会から一か月後、ネビロク氏は毎朝、黄色い旗を持って交差点に立った。角を帽子で隠し、翼を折り畳み、「右を見て、左を見て、魂は売らずに渡りましょう」と児童へ声をかけた。
遅刻しそうな児童を瞬間移動させた件について、学校より注意。以後、徒歩で同行すること。
雨天時、翼を傘代わりに広げた行為は好評。ただし三十人が下へ入ろうとして渋滞が発生。
六、その他
ネビロク氏の娘より、「お父さんは地獄では怖がられているのに、学校では『旗のおじさん』と呼ばれている」と報告。
ネビロク氏より、「悪くない」と小声で回答。
七、次年度について
会長より、活動が好評のため再任を依頼。
ネビロク氏より、「契約期間は一年ではなかったのか」と抗議。
会長より、「再任は別契約です」と説明。
ネビロク氏、契約書を全二十七条まで精査したのち署名。
【付記】
総会終了後、氏は地獄の同僚へ次の文書を送付した。
『人間界には、魂を取らずに時間だけを持っていく組織が存在する。名をPTAという。十分に警戒せよ』
なお、その文書を読んだ同僚三名が、地域行事の餅つき係へ立候補した。理由は「楽しそうだったから」と記録されている。