拾得物は災害級一体
《このドローン、春日井杏のチャンネルじゃないぞ》
《紛失宮の内部? 入場記録がないからセットだろ》
《学生が《蒐集公》を捕まえる企画、さすがに台本》
遺跡調査実習の途中、春日井杏は床に落ちていた配信ドローンを拾った。持ち主確認のため電源を入れると、機体は保存されていた人気配信者のアカウントで生放送を再開した。
杏の背後では《蒐集公コレクター》が、奪った武器と探索者を壁の棚へ並べている。名札を剥がされた六人は意識を保ったまま、展示物として動けない。
蒐集公に奪われた物は、持ち主の記憶からも薄れていく。入口で待つ仲間たちは、すでに六人の人数さえ思い出せなくなっていた。杏だけは実習用台帳へ拾得時刻を書いていたため、空いた六行を見失わずに済んでいた。
杏は腰のポーチから、大学の遺失物タグを一枚取り出した。
《触れた物の所有権を奪うボスだ》
《近づけば本人も収蔵される》
《紙札で何をする気だよ》
「所有者不明。発見場所、紛失宮最奥」
杏は伸びてきた黄金の指を避けなかった。指先が肩へ触れる寸前、彼女は蒐集公の胸飾りへタグを一度、貼った。
巨体が畳まれた。
王冠、外套、四本の腕、棚いっぱいの財宝までが紙札の中心へ吸い込まれ、ぱちん、と音を立てて消える。展示されていた六人だけが床へ落ちた。
杏の手元に残ったタグには、赤い文字が浮かんでいる。
【拾得物:災害級魔物一体】
《遺失物登録が所有権奪取より優先された!?》
《大学の技能記録確認。《拾得保管》はタグを貼った所有者不明品を保管庫へ送る》
《保管庫の重量計、今三百二十トン増えた》
《六人の名札も戻ってる。全員救出!》
杏は拾ったドローンへ向き直り、丁寧に頭を下げた。
「こちらも持ち主へ返したいのですが、どなたの物ですか?」
《先に災害級を返却不能ボックスへ入れた人が言う?》
《学生じゃなく収容専門家》
《紛失宮、主そのものを紛失》
棚から落ちた六人の名札には、奪われていた所属と階級が戻っていた。杏を実習生扱いして先へ行った教授も、その一人だ。
《救出者六名の所有権異常、完全解除》
《保管庫は封鎖済み。蒐集公の再出現反応なし》
教授が特別推薦を口にすると、杏はまず拾得届の記入を頼んだ。
大学の公式実習記録が更新された。
【春日井杏――単独による災害級収容を特別単位として認定】
同時に、保管庫の台帳へ新しい一行が追加された。