日曜日の六人分

榧野家では日曜日が消えるので、土曜の夜に六人分の夕食を並べる。月曜の朝、皿が空なら一週間は無事に過ごせる。一皿でも残っていれば、その席の者は次の日曜まで家へ帰れない。家族が減っても、皿の数を減らしてはいけない。

直弥が実家へ戻ったのは、母の四十九日を終えた土曜だった。

父と妹夫婦、甥、直弥。今いるのは五人だ。それでも食卓には六枚の皿が置かれた。母が使っていた薄い花柄の皿だけ、縁が欠けている。

「何を盛る?」

直弥が聞くと、父は鯖の味噌煮を一切れ載せた。母は骨の多い魚を嫌っていた。

「これしかなかった」

嘘だった。冷蔵庫には母の好きな里芋がある。父は日曜日の規則を、葬式より重く守る男だったが、母の皿だけは空にならなくてもいいと思っているらしい。

夜、六人分の箸を並べた。午前零時になる瞬間は見てはいけない。全員が自室へ入り、カーテンを閉め、時計の電池を抜く。目を閉じれば次は月曜の朝だ。

直弥は眠れなかった。東京のアパートへ戻れば、また一人分の弁当を買い、一人で食べる。母から来ていた「たまには帰れ」という短いメッセージは、既読をつけないまま端末に残っている。

朝、父の叫びで目を覚ました。

五枚の皿はきれいに空だった。花柄の皿には鯖が残っている。だが骨だけになっていた。身を食べた者がいる。

「帰れないのは誰だ」

父が人数を数え始める。妹夫婦、甥、父、直弥。五人いる。六人目の席は空だ。空席の座布団だけが、人が立った直後のように中央へ深くへこんでいた。

直弥は台所へ行き、冷蔵庫を開けた。里芋の鍋が消えている。代わりに小さな保存容器が入り、蓋に油性ペンで「直弥、持って帰る分」と書かれていた。母の字だった。

父は容器を見ても驚かなかった。

「日曜に作ったものは、次の日曜まで開けるな」

それも榧野家の規則だ。

直弥は東京へ戻る新幹線で、容器を膝に抱えた。一週間、開けなかった。次の日曜が消えたあとの月曜、蓋を外すと、里芋はまだ湯気を立てていた。

底には六本目の箸が横たわり、先端にだけ味噌が薄くついていた。