梅干しの種を包む

母の四十九日が終わった夜、御厨深雪は冷凍庫の奥から一個の梅むすびを見つけた。透明な袋に「夜勤」と書かれている。入院前、母が深雪のために握り、渡しそびれたものだった。

母の病気が長引いた二年間、深雪は仕事を減らし、病院と実家を往復した。亡くなった知らせを受けた瞬間、悲しみより先に、これでもう呼び出されないと思った。その安堵が自分の中にあることを、誰にも言えなかった。親戚の前で泣くほど、その感情だけが鮮明になった。

電子レンジで温めると、袋の中にわずかな水滴がついた。海苔のない白い表面から、梅の酸っぱい香りがした。米は一部が硬く、一部が柔らかい。握ってすぐ食べたときのようには戻らなかった。

深雪は机に座らず、台所で立ったままかじった。中心の梅干しに当たるまで、味はほとんどしない。赤い果肉が舌へ触れると、頬の内側がきゅっと縮んだ。母はいつも種を抜かなかった。種の周りがいちばんおいしいから、と言った。

深雪は米を少しずつ外し、種だけを口に残した。昔なら、白くなるまでしゃぶり、母に見せて笑われた。今夜は二度だけ舌で転がし、紙ナプキンへ出した。

母を愛していた。疲れてもいた。早く楽になってほしいと願いながら、自分が楽になる日を待ってもいた。どれか一つを本当として選ぶ必要はないのかもしれない。冷凍した米が同じ柔らかさへ戻らないように、残った気持ちも、きれいな形には戻らない。

最後のひと口が袋の隅に残った。深雪は指で集めず、そのまま口を閉じた。母なら、もったいないと言っただろう。もうその声に従わなくていいことが、寂しく、ほっとした。

梅干しの種を紙で包み、ごみ箱へ入れる。形見にはしなかった。

深雪は、安堵を告白する相手を探すのをやめた。誰かに許されなければ持てない感情ではない。介護が終わって軽くなった肩も、母のいない台所で重くなる胸も、どちらも自分の体に残っている。それだけで十分だった。

袋だけを洗って干すと、「夜勤」の文字が水に透けた。明日の夜、深雪は二年ぶりに追加勤務を入れていた。