森番と三粒の苺

森番フェルナが魔女の集落を追われた理由は、薬草畑に苺を植えたからだった。

「腹の足しにも呪いの材料にもならない」と長老は言った。

フェルナは反論せず、辺境の森にある朽ちた番小屋と、苗を三株だけもらって去った。

番小屋の屋根を直すより先に苗床を囲い、霜の夜には炭火を絶やさなかった。何度も鹿の足跡に驚き、朝ごと葉の枚数を数えた。魔術を使えば早く実らせられたが、急がせる呪文だけは一度も唱えなかった。

春の終わり、最初の実が三粒、葉陰で赤くなった。

一粒は大きく、一粒は少し曲がり、一粒は鳥につつかれかけている。

フェルナは朝から畑の周りの草を抜き、実の下へ乾いた藁を敷いた。

今日やるのは、それだけだった。森全部を整える必要はない。三粒が泥に触れず、無事に摘めればよかった。

昼、森鴉のクロが柵へ降りた。嘴に黒い封筒をくわえている。

魔女の集落で使う、呼び戻しの書状だった。封の上には『疫病発生、治療師不足』と銀文字が浮かんでいた。

彼女を役立たずと呼んだ者たちが、今さら薬の知識を欲しがっている。

フェルナは封筒を戸口に置き、苺の前にしゃがんだ。

茎を爪で切ると、甘い香りが指先に残った。

三粒を木皿へ並べる。大きな一粒は薄く切り、鍋で蜜と一緒に煮た。赤い泡が小さく弾け、番小屋に春の匂いが満ちる。

煮詰めすぎないよう火から外すと、木匙の先から赤い蜜がゆっくり落ちた。薬液なら色と濃度を記録するところだが、今日は帳面を開かない。舌で確かめ、酸っぱければ蜜を足す。それだけでよかった。

焼いた黒パンへ温かな苺蜜を塗る。

つつかれかけた一粒はクロへ投げた。曲がった一粒は自分でかじった。

酸っぱさに目を細めた直後、舌の奥に甘さが広がる。

クロが黒い封筒をつついた。

「急ぎだと?」

鴉が一声鳴く。

フェルナは湯気の立つ苺パンをもう一枚焼いた。

「私を待てるくらいなら、夕食も待てるでしょう。でも苺は、煮たてが一番よ」

封は開かれないまま、鍋の赤い泡が最後に一度だけ、ぽん、と弾けた。

その音を聞いて、フェルナは初めて、この森を自分の家だと思った。