死刑剣の本当の持ち主
カシュは、自分を処刑する剣を鑑定させられた。
「最後に得意技を使わせてやる」
玉座の簒奪者ヴォルグが笑う。王家の宝を盗んだ罪を着せられたカシュは、両手を鎖で縛られ、処刑台へ跪かされていた。
【所有鑑定:対象を正当に所有する者を表示する。現在の所持者とは限らない】
彼の仕事は、盗品を見分けることだった。だが貴族の品を平民のものだと判定した日から、邪魔者にされた。
処刑人が掲げる銀剣は、初代女王が反逆者を裁いたという国宝だ。ヴォルグはそれを奪い、反対者を百人斬った。
「さあ、誰の物だ?」
カシュは剣を見た。
表示された名に、息が止まる。
正当所有者――不当に王権から裁かれようとする者。
初代女王は、剣を王ではなく、王に理不尽に殺される者へ遺していた。暴君の手で振るわれた時、剣自身が次の持ち主を選ぶように。
処刑人が刃を振り下ろす。
カシュは鎖につながれた手を伸ばした。
「返せ。それは今、俺の剣だ」
銀剣が空中で止まった。
柄が処刑人の手から抜け、カシュの掌へ飛ぶ。刃は鎖だけを断ち、次いで玉座へ向いた。壁に並ぶ王家の紋章が一斉に輝き、ヴォルグの冠から光が消える。
「偽りだ!」
簒奪者が叫ぶほど、剣は強く鳴った。広場の騎士たちは、国宝が誰を反逆者と認めたかを見ていた。
最初に剣を置いたのは老将軍だった。続いて百本の剣が石畳へ落ちる。
カシュはヴォルグを斬らなかった。ただ銀剣を処刑台へ突き立てる。
「裁判をやり直せ。今度は、本当の所有者である民の前で」
広場の民は、処刑されるたび目を伏せてきた。だが銀剣がカシュを選んだことで、今日は誰も黙らなかった。「弟を返せ」「父の裁判もやり直せ」と声が重なり、処刑台は告発台へ変わる。ヴォルグが秘密警備隊を呼んでも、隊長の腰の王家章は光を失い、命令を受け付けなかった。盗まれていたのは宝ではなく、国そのものだった。
歓声の中、彼の職業欄が王家の紋章と同じ銀色へ変わった。
【職業:盗品鑑定人 → 王権所有鑑定卿】