残り一回の不死

「回数を数えるだけの鑑定士など、帳簿係にも劣る」

ギルド長ヘクトはリオグの登録証を破り、討伐隊から追放した。

【残数鑑定:技能または魔道具が、あと何回発動できるかを表示する】

威力も効果も分からない。数字が百なら絶望し、零なら使えないと知るだけ。リオグは笑い声を背に、闘技門を出た。

その門を、血まみれの勇者アロンダが突き破って戻ってきた。

追ってきたのは不死将ヴァグラム。首を落としても胸を貫いても、黒い首飾りが光るたび傷一つない姿に戻る。すでに三度殺され、なお笑っていた。最初は斬られた首が戻り、次は焼けた肉が巻き戻り、三度目には砕けた魔核さえ元の位置へ収まった。復活するたび、彼の笑い声だけが大きくなる。

闘技場には避難できない負傷兵が二百人いた。門を閉じれば不死将と一緒に閉じ込められ、開ければ王都へ通してしまう。

「人間の刃で、我が不死は尽きぬ!」

兵は退き、アロンダの聖剣にも次の大技を放つ力が残っていない。

リオグは首飾りを鑑定した。

――残り発動回数:一。

「一度殺せば終わりだ!」

ヘクトが叫ぶ。だがアロンダは首を振った。

「私も次の一撃で倒れる。復活した奴を殺す者がいない」

リオグは治療班の冷却棺を見た。重傷者の心拍を一時停止させ、手術まで命を保つ道具だ。

「将軍を殺す必要はありません。首飾りに、死んだと思わせればいい」

水術師たちが不死将の周囲を凍らせる。ヴァグラムは氷を砕いて笑ったが、リオグは首ではなく胸元だけを指した。冷却棺の術式を反転させ、心臓の周囲から熱を奪う。

一拍。

不死将の心臓が止まり、首飾りが眩く光った。全身は無傷のまま再生し、心臓も動き出す。

リオグはもう一度鑑定した。

――残り発動回数:零。

「今です」

アロンダの聖剣が、黒い首飾りごと不死将を断った。今度は光らない。ヴァグラムは信じられない顔のまま灰になった。

ギルド長は破った登録証を拾い集めようとした。勇者はその手を聖剣の腹で押さえる。

「回数を数えただけだと?」

アロンダは自分の勇者章を外し、リオグの胸へつけた。

「こいつは敵の『永遠』に終わりがあると、最初から見抜いていた」