真実の代名
魔法官が人の名を奪うと、名を返されるまで、その者は嘘をつけない。ただし奪った者は、その名に向けられた非難をすべて引き受ける。
「それでも盗るのか」
法廷の中央で、老魔法官バドロが笑った。かつてセレフィに法を教えた師だ。今は救援金を横流しした疑いで立っているが、証拠は焼かれ、証人は口を閉ざしていた。
「私が無実だと言えば、陪審は信じる。お前は恩師を陥れた忘恩の弟子になるぞ」
セレフィは名盗りの輪を握った。銀の輪を相手の影に置き、真名を一度呼べば、名は輪の内側へ落ちる。
だがバドロの名には、すでに数えきれない罵声が結びついている。強欲、裏切り者、人殺し。名を奪った瞬間、それらはセレフィへ向きを変える。
傍聴席の端に、救援所で働く若い女性がいた。冬に妹を亡くした人だ。届くはずの薬が来なかった。その理由を知りたくて、毎日ここへ通っている。
セレフィは銀輪を床へ置いた。
「師匠。最後に一つだけ」
「何だ」
「私に法を教えたのは、後悔していますか」
バドロの目がわずかに揺れた。
セレフィは彼の真名を呼んだ。
輪の内側で影がちぎれ、黒い文字になった。バドロは喉を押さえる。傍聴席から誰かが「盗人」と叫んだ。その声は途中で向きを変え、矢のようにセレフィの胸へ刺さった。
忘恩者。野心家。恩師殺し。
次々に言葉が肌へ焼きつく。昨日まで彼へ向けられていた唾も疑いも、持ち主を見つけたように彼女へ集まった。
裁判長が問うた。
「救援金を私邸へ運ばせたか」
「はい」
バドロの口が、本人の意思に逆らって動く。
「証人を脅したか」
「はい」
「薬が届かず死者が出ると知っていたか」
長い沈黙の後、また「はい」が落ちた。
傍聴席の女性が泣き崩れた。セレフィは、その涙を見届けるまで立っていた。
衛兵が近づく。彼らの目にはもう、バドロではなくセレフィこそが長年人を欺いた悪党に見えている。銀輪の中で奪った名が脈打つ。
「名を返せ」と師が囁いた。「今なら、お前はまだお前でいられる」
セレフィは輪を踏み割った。
黒い文字が彼女の靴へ染み込み、傍聴席から初めて石が投げられた。