角を隠さない名簿

山羊が三頭消えた翌朝、角持ち族の避難民に疑いが向いた。

北山の村を魔獣に奪われ、彼らが牧草村へ来てまだ五日。冬の干し草は少なく、よそ者の獣に食わせる余裕はないと皆が言った。

村の管理官トゥーラは、盗人探しより先に全家畜を数えた。

消えた三頭は、壊れた西柵から谷へ降りているのが見つかった。角持ち族の少女が崖際まで降り、凍えた一頭を背負って戻ったのに、礼を言う声はまばらだった。盗みの疑いが晴れても、干し草を奪うという新しい疑いが残ったからだ。

そこで彼女は広場に干し草の分配表を出した。

山羊一頭につき一束、牛は三束、乳を出す獣は半束追加。各家十日分を先に確保し、余剰の八分の一だけ共同納屋へ。角持ち族も古参の家も同じ。納屋の鍵は、双方から一人ずつ選んで二本に分ける。配った束は納屋の柱へ炭で記し、片方の鍵番だけでは一束も動かせない。鍵番は月ごとに村会のくじで交代する。くじ箱も、名簿と同じ納屋の軒下に置かれた。

「角の数まで書くのか」

避難民の少年が、頭を隠す布を押さえて聞いた。

「書くのは家畜の数だけ。人の角は飼料を食べないでしょう」

笑ったのは、疑っていた牧夫だった。

角持ち族の長は、十日分しかない干し草を見て首を振った。

「納める余剰はない。代わりに西柵を直したい。俺たちは山の柵組みを知っている」

義務にはしなかった。だが翌朝、避難民たちは木槌を持って谷へ向かい、牧草村の若者も縄を抱えて追った。角の形に合わせた安全な作業帽まで、革職人が勝手に縫った。

三日後、西柵は二重になった。

共同納屋には、干し草の代わりに修繕日数を書いた札が掛けられた。それを見た牛飼いが「なら俺は荷車を出す」と自分の札を足す。

冬の初雪が降った日、谷へ落ちた三頭も丸々と太って戻り、子どもたちは家畜名簿を新しく書き直した。

山羊、牛、羊。その横に、世話をする家の印。

角持ち族の家の欄だけ、少年が布を外して描いた二本の立派な角があった。

誰も消さず、納屋の扉は二本の鍵で同時に開いた。