銀山を支えた見えない柱

鉱山主ハモンがミレクを解雇して一刻後、銀山の第一坑道が崩れた。

爆破も地震もない。鉱石を載せた一台の荷車が曲がり角を通っただけで、天井に細い亀裂が走った。砂が落ち、梁が軋み、坑夫たちは道具を捨てて外へ逃げた。崩落は入口の手前で止まったが、奥には銀鉱石と採掘機が残された。

「昨日まで何百台も通った道だぞ!」

古参坑夫が、岩壁に残る薄い六角形の跡を指した。

「あれはミレクの結界です。梁の代わりじゃない。荷車が通るたびに生まれる震えを、小分けにして岩盤へ逃がしていたんです」

ミレクは毎晩亀裂を測り、場所ごとに結界の硬さを変えていた。硬すぎれば衝撃が別の壁へ集まる。柔らかすぎれば落盤する。ハモンには、彼が岩へ手を当てて休んでいるようにしか見えなかった。

「木の柱で十分だ」と追放した最初の日、見えない柱だけが消えた。

同じ午後、ミレクは町外れの石切場にいた。現場監督マゼルが、切り出した巨大な石板の下を覗き込む。

「支柱を一本抜いても落ちないね」

「石を浮かせてはいません。重さを十二か所へ分けています。職人が下へ入っても安全です」

「今まで三十人で運んだ石を八人で扱える。しかも誰も命を賭けなくていい」

監督は皆の前で、ミレクへ銀の安全章を渡した。坑道で一度も与えられなかった、責任者だけが持つ印だった。

そこへ煤だらけの鉱山使いが走ってきた。

「第一坑道を開け直してくれ! 主人は給金を二倍にすると申しております。明朝までに戻れと」

ミレクは安全章を上着へ留め、静かに首を振った。

鉱山使いは、奥に残された銀の値段ばかりを並べた。閉じ込められた坑夫がいないことには、一度も触れなかった。ミレクが毎晩、全員の退坑を待ってから結界を調整していたことさえ、主人は知らないのだろう。石切場では逆だった。マゼルは作業量を増やす話より先に、結界が切れた場合の退避合図を決めていた。職人たちも新しい安全章を見て、明日から安心して家へ帰れると笑った。その笑顔は、銀塊より重かった。

「銀山との契約は、今朝で終了しています」