黄色い欠勤表

維月が介護休暇を申請するたび、私は「証明は要らないよ」と言った。

同じチームの仲間を疑うなんて、冷たい会社のすることだ。だから代わりに、母親の施設名と服薬時間だけを聞いた。緊急時、私が説明できたほうが維月も安心する。

私は彼女の仕事を引き取り、チャットには毎朝〈お母さま優先で〉と書いた。ただし進捗表には、休んだ時間を黄色で塗った。支えている側の負担も、見える化しなければ不公平だからだ。

維月が戻る日は、私が更新した資料を机へ積み、『無理しなくていい』と言いながら説明役を譲らなかった。介護中の人へ責任ある案件を持たせるのは酷だと思い、彼女の昇格推薦も保留にした。

ある日、介護休暇中の維月がカフェにいる写真を見つけた。店の壁紙から場所を特定し、施設まで徒歩三分だと地図に印をつけた。母親を置いてお茶を飲む余裕があるのなら、午後の会議には出られる。私は人事へ匿名で画像を送った。

もう一つ、彼女が施設の家族ページのパスワードを変えたことも怪しかった。以前は私の端末からも予定を確認できたのに、「家族以外は見ないで」と急に怒った。隠すことがある人の言い方だった。

面談の日、私は責めるつもりはないと前置きした。維月は黙って資料を配った。カフェは施設併設の家族相談室で、写真の日はケアマネジャーとの面談中だった。

それだけではない。家族ページの履歴には、私の端末からショートステイの予約が二度取り消された記録が残っていた。

私は、維月が休み癖をつけないよう確認しただけだ。ショートステイを使えば、彼女は介護を理由にしながら転職面接へ行ける。実際、予定欄には「面談」とあった。会社に残るよう支えるのも同僚の親切ではないか。

維月は、面談とは母親の退院支援会議だと言った。そして、私が予約を消したせいで受け入れ先が延び、三日余計に欠勤したと説明した。

人事は私のアクセスを不正利用として調べると言った。維月は席を移り、私の担当からも外れた。最後まで「今までありがとう」と言わなかった。

帰宅後、私はブラウザの保存情報を削除した。

それでも施設のパスワードは、伏せ字の星が何個だったかまで覚えている。