一撃目で尽きた聖剣
「敵の横で数字を数えるだけなら、子どもでもできる」
参謀ヒューノを追放した翌日、勇者エグバートは白骨竜へ聖剣の奥義を放った。
眩い光が洞窟を満たし、竜の頭蓋が粉々になる。仲間は勝利を叫んだ。
その直後、足元の骨が組み上がった。
砕けた頭は囮だった。白骨竜の核は尾の三節目へ移り、無傷の胴体が起き上がる。勇者の聖剣は奥義の反動で光を失い、次に使えるのは一時間後。回復役も、勝利を見越して祝福を使い切っていた。
一行は入口まで追い戻され、依頼人から支給された封印杭を三本とも失った。
エグバートはそこでようやく、ヒューノが戦闘中に指を折って数えていた意味を思い出した。白骨竜は七回攻撃を受けるたび核を移す。ヒューノは仲間の小攻撃を調整し、核が頭へ戻った瞬間だけ奥義を撃つ計画を立てていた。
「待て」という地味な一言が、必殺技を本当に必殺にしていたのだ。
白骨竜は洞窟の外へ頭を出し、近くの村へ向かい始めた。勇者一行は奥義が戻るまで足止めしようとしたが、誰が何回攻撃したか分からず、核は腕、胸、尾へ移り続ける。高価な封印杭を打つたび外れ、最後の一本は空の肋骨を縫い止めただけだった。
エグバートは、ヒューノが戦闘後に必ず皆へ攻撃回数を尋ねていたことを思い出した。褒められたいのだと思っていたが、あれは次の勝利条件を更新するための確認だった。
同じ頃、ヒューノは城下の魔獣対策局で、暴れる石像鬼を囲む衛兵へ指示を出していた。
「三回目の羽ばたきの後、左脚が止まります。斬るのはそこだけです」
衛兵たちは一斉攻撃をせず、縄一本で石像鬼を倒した。壊れた屋根瓦はゼロ、負傷者もゼロ。局長サナトは、ヒューノの机へ正式な戦術顧問札を置いた。
「派手な一撃を作るのは剣士だ。無駄にしないのは君の仕事だな」
昼過ぎ、勇者の伝令鳥が飛び込んだ。白骨竜が洞窟から出る前に戻れ。分け前は同額、口出しも認める、と書かれている。
対策局はすでに村の封鎖と白骨竜討伐を決定していた。ヒューノは局の討伐隊へ核の移動表を渡し、出動鐘を鳴らす。守るべき村を見捨てる気はない。ただし、戻る場所は彼を捨てた一行ではなかった。
ヒューノは奥義の再使用時間より短い返書を書いた。
「勇者一行との参謀契約は、追放宣言の時点で終了しています」