一枚の共用魔晶

魔法集落エルダでは、才能より先に財布が測られた。

学校の実技には、一人一枚の魔晶が要る。高価な石を買えない子は窓の外から見学し、十五歳になると「適性なし」と記録された。実際には一度も魔力を流したことがないのに。

若い領主ラザールは、入学試験の日に私物の魔晶を机へ置いた。

「石を所有することと、魔法を学ぶことは別だ。学校で共用する」

財源は商用魔法の使用料。暖炉一つ、家庭の治癒一回までは無税。だが工房で一日に百回も使う加熱術や、商会の転送陣には、使用回数に応じて一厘ずつ掛ける。集まった額、買った魔晶の番号、修理費まで校門脇の水晶板へ表示させた。領主館の転送陣も例外ではない。

大魔術工房の主は眉をつり上げた。

「我々の魔力で、貧民の子を育てると?」

「あなたの工房が次に雇う術師を育てます。ただし、雇うかどうかは卒業生が選びます」

その返答を聞いた若い職人たちが、先に賛成札を入れた。鍛冶屋は共用石を固定する鉄枠を作り、薬師は火傷薬を寄付し、引退した術師は週二日の指導を申し出た。命令状は一枚も出ていない。

共用石の予約表には家名を書かず、一人十分の砂時計だけを置いた。工房主の息子も炭売りの子も同じ順番で、失敗すればもう一度列へ並ぶ。上級生は待ち時間に魔力の整え方を教え始めた。高価な石が一枚しかないことは、取り合う理由ではなく、教え合う理由になった。

最初に共用魔晶へ触れたのは、炭売りの娘メアだった。見学席に三年座り続けた子だ。

「壊したら、家では払えません」

ラザールは水晶板を指した。

「破損積立も、もうここにある。失敗する権利まで共用だ」

見学席という札は、その朝に薪へされた。そこにいた長椅子は輪へ組み替えられ、待つ子も実技の記録係として授業へ加わった。

メアが息を吸い、魔力を流す。淡い光ではなかった。教室の天井いっぱいに、夜明け色の輪が広がった。教師が驚いて適性計を確かめる間、窓の外にいた子どもたちが一斉に教室へ入ってくる。

校門の水晶板には、その日初めて、支出ではない一行が浮かんだ。

『共用魔晶第一号――使用者、全児童』