七階半の夜

夜勤の看護師は、七階と八階の間にある踊り場を知っていた。

非常灯しかなく、窓もない。そこへ扉を閉めて入ると、外の一分が、中では一時間になった。

患者が亡くなった夜、彼女は踊り場へ行った。

家族へ説明し、医師へ報告し、シーツを替える。仕事は滞りなく終えた。

けれど亡くなる直前、患者が「朝の新聞を取っておいて」と言ったことが、胸の中に残っていた。

明日の朝が来ない人へ、彼女は「分かりました」と答えてしまった。

腕時計で一時間、階段に座った。

泣こうとしたが涙は出ず、代わりに業務の手順ばかり思い出した。

二時間目に、患者が毎朝クロスワードを解いていたことを思い出した。

三時間目に、空欄を一つ残して「明日やる」と笑った顔を思い出した。

踊り場の扉が開いた。

新人の看護師が入ってきた。

外では三分しかたっていない。

「ここ、使っていい場所ですか」

「休憩室ではないけど」

「泣く場所だと聞きました」

誰から聞いたのか、彼女は尋ねなかった。

新人は昼に叱られたことを話し、先輩は亡くなった患者の新聞のことを話した。

二人で自動販売機の薄いコーヒーを飲んだ。

外の時計なら七分、踊り場では七時間が過ぎた。

最後に、新人が言った。

「新聞、取っておきましょう」

「読めないのに?」

「家族が読むかもしれません。誰も読まなくても、朝は来たって分かります」

扉を開けると、廊下の時計は七分進んでいた。

二人は何事もなかった顔で持ち場へ戻った。

朝、彼女は売店で新聞を一部買い、患者の家族へ渡した。

家族は驚いたあと、クロスワードの最後の空欄を見つけた。

答えは四文字だった。

家族全員で考え、退院する他の患者まで加わったが、結局分からなかった。

誰かが「明日に回しましょう」と言い、皆が少し笑った。

それから彼女は、踊り場を一人で使わなくなった。

泣きたい人がいれば、扉の外で待つか、中へ一緒に入った。

病院の時間はいつも足りない。

それでも七階半には、悲しみが仕事の邪魔にならない形へ整うまで、少し長く座っていられる夜があった。