予定調整の青い丸

 理央はベッドに座ったまま、予定調整表の青い丸を数えていた。

 大学のゼミ仲間五人で、久しぶりに会う話が出た。候補日は三つ。四人はすでに入力済みで、土曜の夜に丸が集まっている。理央だけが空欄だった。

〈シフト出た?〉

〈理央待ちだよー〉

 昼休みに届いていたメッセージへ、帰りの電車で〈今日中に見るね〉と返した。その一文は読まれている。けれど二十一時すぎ、理央が〈土曜、仕事が長引くかもしれなくて、まだ確定できない〉と送ってからは、誰の既読もつかなかった。

 テーブルには、駅前で買った焼きそばがある。割り箸を入れると麺が四角い塊のまま持ち上がった。青のりが透明な蓋に張りつき、豚肉は一枚しか見つからない。レシートの時刻は十九時五十八分。あれから一時間以上、上着も脱がずに予定表を見ていたことになる。

 土曜の仕事は、たぶん定時に終わる。でも「たぶん」を丸にして、もし遅れたら皆に迷惑をかける。三角にすれば、自分のせいで日が決まらない。罰印にすれば、四人はすぐ決められる。どれを選んでも、自分だけが生活の組み立てに失敗しているように思えた。

 窓辺の鉢植えが、葉を少し下げていた。理央はようやくコートを脱ぎ、コップ半分の水をやった。土がゆっくり濃くなる。先週は水をやりすぎて葉を一枚黄色くした。足りない日も多すぎる日もあるのだと、その葉を見て知った。毎日同じ量を飲めないのは、人も植物も似ている。

 チャットはまだ未読のままだった。誰も理央を待ちながら責めてはいない。ただ、今は画面を見ていない。それだけの空白に、理央が勝手に採点表を置いていた。

 予定調整表を開き、土曜に三角をつける。備考欄には〈二十時以降なら行けます〉と書いた。完璧な丸ではないが、会いたくないわけでもない。

 冷えた焼きそばにマヨネーズを細くかける。固まった麺は、箸で少しずつほぐれた。

 全員に合わせられない週があっても、友人失格にはならない。理央は青い三角をそのままにして、ようやく最初のひと口を食べた。