二つの星の出生証明

 開拓船の保育区画で火災が起きた夜、二人の赤ん坊の識別端末が焼けた。

 避難時の手書き番号が入れ替わっていたと判明したのは、十五年後だった。

 一人は海洋惑星で、潜水士の両親に育てられた。

 もう一人は乾燥惑星で、植物学者の両親に育てられた。

 二つの星は、定期船で十一か月離れている。

 植民政府は、二人へ選択を求めた。

〈遺伝家族への帰還〉

〈養育家族への残留〉

 画面には二つしかなかった。

「帰還って、どこへ?」

 海の娘が尋ねた。

 生まれた星へ戻ることか。育った星へ帰ることか。

 二人は通信で初めて顔を合わせた。海の娘の髪は短く、乾燥惑星の娘は腰まで編んでいた。それでも笑うと、頬に同じ形のくぼみができた。

「そっちの家族、どんな人?」

「母は植物に話しかける。父は水を使うと秒数を数える」

「私の母は魚に話しかける。父は風呂に三時間入る」

 二人は笑った。

 十一か月後、二家族は中継衛星で会った。

 親たちは、相手の娘へ近づくことも、自分の娘を抱きしめることもためらった。

 海の娘が先に、育ての母の手を取った。もう片方の手で、生みの母の袖をつかんだ。

「選択肢を増やして」

「法律では、家族籍は一つです」

 職員が答えた。

「取り違えたのは大人なのに、直すために子どもが家族を一つ捨てるの?」

 乾燥惑星の娘も言った。

「私たちは荷物じゃない。帰還先を一つに決めないで」

 二人は共同申請書を提出した。

〈二重起源家族籍〉

 生物学上の家族と養育上の家族を、上下をつけず記録する制度。

 前例はなかった。

 審査を待つあいだ、海の両親は乾燥惑星の娘へ泳ぎ方を教え、植物学者の両親は海の娘へ種子の眠らせ方を教えた。

 別れの日、四人の親はそれぞれ二人の娘の宇宙服へ、小さな印を縫いつけた。

 波の形と、芽の形。

 半年後、制度は承認された。

 出生証明書の〈家族〉欄は一行から四行へ増え、その下に本人たちが一文を加えた。

〈生まれた場所は始点であり、育った場所は帰る場所であり、出会い直した場所はこれからの家です〉

 二人は元の星へ戻った。交換はしなかった。

 ただ毎年、中継衛星で二家族が集まるようになった。

 そこでは海の水を使って乾燥惑星の種を育てた。

 最初に咲いた花は、波にも炎にも似た形だった。

 誰の星の花かと聞かれるたび、娘たちは答えた。

「家族の星の花です」