二十歳の主役
二十歳の集いの控室で、柴垣燎は蓬田柊吾の肩幅を見て笑った。
「相変わらずでかいな。昔みたいに写真の端へ行けよ。主役の顔が隠れる」
中学時代、柊吾は背が高いだけで動きが鈍いとからかわれ、体育館の倉庫へボールを取りに行かされていた。
だが今、黒いスーツを着た柊吾は、長身を持て余していなかった。短く整えた髪、まっすぐな姿勢。会場入口では、知らない参加者まで彼を見て小声で名前を確かめていた。
柴垣は気づかず、自分が地元モデル事務所へ所属した話を続けた。
「今日は俺が集合写真の中央。実行委員で決めたから」
開会直前、体育館の外がざわめいた。テレビ局の中継車が到着し、スポーツ記者が何人も入ってくる。市長は柴垣ではなく、柊吾へ赤い花を付けた。
柊吾は高校卒業後にプロバスケットボール選手となり、十九歳で代表候補に選ばれていた。海外リーグとの大型契約も前日に発表されたばかりだった。スポーツ誌の表紙になった精悍な顔を、柴垣だけが昔の眼鏡姿へ重ねられずにいたのだ。
司会者が告げる。
「本日の二十歳代表挨拶は、蓬田柊吾選手にお願いいたします。また、蓬田選手の寄付により、市内の全中学校へ新しいバスケットゴールが設置されます」
拍手が体育館を満たした。海外スポーツブランドとの広告契約も発表され、その金額は市の年間スポーツ予算に近かった。
柴垣は慌てて柊吾の腕をつかんだ。
「俺たち昔から仲良かったよな。取材で同級生代表として話していい?」
柊吾はその手を静かに外した。
「ボールを拾わせた話なら、事実だからどうぞ」
記者の一人が、柴垣へマイクを向けかけて止まった。柊吾の言葉を聞き、別の同級生へ取材相手を変える。
集合写真の時間になった。市長、恩師、柊吾が中央に立ち、周囲へ参加者が集まる。柴垣が置いた自分用の立ち位置札は、報道カメラの三脚で隠れていた。
「柊吾くん、中央へもう半歩お願いします」
写真家の声で柊吾が前へ出た瞬間、かつて端へ追いやられた少年が、町の二十歳を代表する一枚の中心になった。